音楽備忘録2283 テープレコーダのよもやま話⑨
さてテープコンプレッションの具体的な効能より先に、その正体の詳細について掘ってみよう。
かつてみたいに仮に要らなくても何処ででも掛かってりゃ未だしも、今現実的に必要時は殆どデジタルシミュレートをしてくしかないかんね。
処がドッコイどうも原理の周知徹底が甘いせいか、はたまた現行音声デジタル規格や回路方式では厳しいか「それじゃないんだよなぁ」ばかりが蔓延しとるんだ。
概述の如く空気干渉や磁気飽和歪みに依る音の変容も一般には十羽一絡げに「歪み」と解釈されてるが、非音響専門家に対して相応しい呼称は「ゆがみ」なのだ。
つまり根本的な性質が電気的クリッピング(昔称:音が割れる)とは全く別物で、その根源は柔軟性にあると考えれば良い。
因みにクリッピングとはある一定値を越すと途端に歪むタイプので、車輪に例えるなら肉眼では変形が殆ど分からない鉄道のタイヤだ。
又ちびっととヲタって専門用語では輪軸と呼ぶが、車軸と輪っかは今も別々に作って合体させたのが多い。
が輪の方は一体成型の他に自動車のホイールとタイヤの様に、是又別々に作って焼嵌めや圧入で合体させてるのもある。
上記後者の場合軸を除けば部品構成自体は自動車と同じで、新交通システムやモノレールの(こっちは細部を除き自動車と一緒)を除けば材質が違うだけだ。
して鉄タイヤの方でもし視認可能な程の変形が起れば、その時はほぼ大抵割損してるか最低でも既にヒビ入りしてる。
要するに硬いから変形する程の力が加われば、或はその手前でもう割れてまうんだ。
だが「ゆがみ」の方は正に空気入りゴムタイヤとクリソツで、簡単に変形はするがそう簡単に割れ(パンク)たりゃしないでしょ。
してⅡでこれが音や音楽で歪みは内容を別物に変身させるから意図したの以外迷惑千万だが、ゆがみの方だったら神経質にならなきゃ内容自体には左程影響を与えねんですよ。
上出ヲタ比喩で表せば鉄輪割損→即脱線と事故に繋がるんで運転不能となるのが、ゴムタイヤがボヨンボヨンした処でせいぜいレース時等のコーナリング限界が一寸下がるだけで普通に走れる。
もう1つ現代人が誤認してるのがゆがみ方で確かに過大入力時のテープコンプはそこそこ目立つが、実際は変形量が異なるだけで最初から既に僅かにはゆがんでんすよ。
そんなじゃちっとも原音忠実再生じゃないから歪み・ゆがみの排除や、その為にデジタルオーディオシステムだって苦労して開発しはしたんだけどね。
けど天然状態で発音して天然状態で音を聴く行為自体が、音源-人耳間の空気性質干渉で元々理論的リニア状態になんか全然なって無いのを皆忘れてんすわ。
ならばもう耳道の中で鳴らせば影響は劇的に減らせるけど、そうして聴こえたピアノだともう皆が知ってるあの音じゃ全然無くなるのだ。
ってかそもそも仮にあれだけのガタイのを耳道に収まる程ミクロ化出来たとして、そしたらダニみたいなちっさい奴にでも弾いて貰いますかっての。
まさかそう云う訳にも行かねえから「ゆがみ」の全てを悪認定した時点が間違いの源で、ゆがみとの共生をもっと模索しねえのがいけねんだ。
又音楽内容に依って歪み・ゆがみの影響にかなり差があり、Classic系等では歪みはホントに邪魔者だ。
がRock系で歪みを忌避事項にしたらもう死活問題で、但しそれが「美味しい歪み・ゆがみ」であるのは重要だがね。
=続く=



最近のコメント