音楽備忘録1550 デジタル音楽録音でのレイテンシ謎:補遺➐
〆ようと思って後から想い出してダラダラ続けるのは悪い癖だが、折角一介の音響技師なので技術的側面からしっかり掘っとこう。
利便性等で一般思考では明らかにデジダルの方が有利なんだが、その多くはコストについてだけになってるんだ。
例えば纏めて数曲録る際、各曲に合わせてMixer卓のパラメータを事前にプリセットしとければ楽だ。
そう云うのはデジタル制御のお家芸だが、今はほぼ廃れたが一時期はデジアナハイブリッドってのがMixerにもあったんよ。
これは放送や照明等オペレータ数が録音より少な目になりがちな分野ではもっと前から存在してて、具体的にはサーボモーターでフェーダを動かしたりしてたんだ。(当初は制御もアナログだったが)
この技術は現代ではかなり少数化してるものの、エアコンのフラップ(古くは整風板と称す:意味は今より分かり易かった!?)等では寧ろ欠かせなくなってるぞ。
一般にはSyntheなら誰でも訊いた事のある、Sequential CircuitsのProphet-5みたいに知名度は得られなかったがね。
その訳は業務録音ってニッチな分野だったのと、かなりのお値段だったのが災いしててで。
その上Syntheの方で想像が付く様に、設定しとけるパラメータに限定もあったしさ。
だから操作性等を優先すると、現実的にはハイブリッドが選択肢に入れられる人は少なかったんだ。
技術レベルだけに絞れば実際コストは大問題には違いねえが、デジタルだから出来る様になったってのは皆が想像してるよりかなり少ないのよ。
例えばⅡで幾ら利便性は上げられても、録音では第1関門となるPreampの性能。
電源電圧等言うなればフォーマット原理的に、デジタルで特にローコストを狙うと圧倒的に不利なんだぜ。
それの端的表れがPCのATX電源にあって、低電圧・大電流駆動が現行半導体の主流なのだ。
が微弱なMic出力をLineレベル迄昇圧させるとかは、敢えて増幅と言わず昇圧と書いた如く電源電圧余裕は大きな鍵を握ったままなんすわ。
リニア伝送が苦手なB級Push-Pull回路や差動増幅回路を利用しても、最大出力は電源電圧のやっと2倍が理論限界。
因みに+25dBu(+4dBでのPeak上限値)って、交流電圧に翻訳すると14V程度になる。
故に電圧増幅が主要任務となると、電源電圧を高くしとくのが最重要なんざます。
けど殆どがデジタル回路で構成されてると他では要らんので、アナログPre部だけの為に高圧出力を用意すればそれだけで電源が凄く高コストになっちまうんだ。
因みにこれは超爆音タイプのヘッドホンでも同様で、インナーイヤーやスピーカと比べると電圧は欲しいが電流は殆ど要らんとデジタル用電源とは真逆で非常に相性がよろしくないのだ。
つまりは録音と云う特殊分野では、スマホ持っててエレキを演る人みたいに別物として捉える必要があるんすよ。
万一これに異議を唱えるってんなら、スマホは最新型欲しがっても決して球Ampやストンプは欲しがるなって言ってる様なもんよ。
+一旦終了+
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