音楽備忘録1490 デジタル音楽録音でのレイテンシ謎➎
対策の策定前に我々ユーザーサイドの反省点も顧みてみようと思うが、誰だって音楽内容に全集中してれば非音楽的瑕疵にはそれなりに鈍くなるもんだ。
だからこそなるべくなら音楽面と音響面は分離担当した方が良いんだが、ミュージシャンでも簡単に扱える機器が増え過ぎたのが仇になったかねえ。
それを実感して貰う為に、昔のオープンリールマルチトラッカーでの操作について一寸語っとこうかね。
あれだけテープが大ききゃ重そうだの高価そうなのは察しが付くだろうが、実際の作業でもっと面倒なのはコンディショニングなのだ。
マルチトラッカーではトラック並列数を稼ぎたいから大抵は一方通行にしてあって、そうすると常時巻き戻しが必要でその間じっと我慢の子を強いられる。
そればかりか大事な記録≒マスターテープには少しでも保存状態を向上させる為、恐らく若い人には初耳の「化粧巻き」なる作業が必須だったん。
この化粧巻の実態は単に音を聴く必要が無いだけの通常再生で、それ位「ヘッドやテープガイドのほぼ全てに接触させて急がないで巻く」様にしないと簡単に「巻乱れ」(テープ巾面がランダムに左右にズレて重なってく)を起こしちゃって変な癖が付いちゃうのよ。
その他レコーダの磁気ヘッドがあっという間に汚れるから、かなり高頻度(最長スパンでフル再生10回事)にガーゼに無水アルコールなる物を含浸させて拭ってやらなきゃなんなかった。(無水のにしないと金属部を腐食させる)
その様に「どうしても掛る手間」があると少なくとも状態監視の癖位は付くもんで、何か違和感があったら即確認ってのがホントは面倒だがそんなもんだと習慣的になってたんだ。
デジタル化でこれ等のプロセスが不要となると杜撰大王は一気に慢心しちまって、録音機に対しては放し飼い或は野放し状態になってたんですわ。
それプラス分かる箇所では考えてそれ以外は偶然にレイテンシの出難い組合せになってたもんだから、もう何年も利用してるのに真剣に考察しなかったんだ。
尤も深層心理ではそれだけじゃなく、アナログみたいに魔対策や魔改造が専用集積回路のお陰でほぼ不可能になったのがあったがね。
のが調べ出してみたらメーカ側の「一寸だから実用上殆ど無問題」とかってな真っ赤な嘘で、と言っても単なる嘘つきってよりゃどう困るかを知らなくて愚直にそう信じてる人の方が多そうな感じなんだよ。
そうこうしてる内アナログ機との直接比較の機会を逸してって、メーカもユーザーも鈍感化してっちゃったんじゃないかな。
前回述の通り技術的にはとっくにクリア可能で、業務用デジタル黎明期の機種にはちゃんと採用されてたんだ。
何しろ当時デジタルに挑戦出来る様な現場では、アナログでも最終進化系のハイエンドなのが比較対象として手ぐすね引いて待ち構えてたかんね。
そんな処へ今の汎用みたいなグダグダレイテンシのを持ってったら、3秒も経たずに却下されただろうさ。
楽器の方でも一部デジタルは登場してたけど、まだまだキワモノ扱いで弱点を問題視する程の位置を占めてなかったし。
ので或は露骨にレイテンシのあるチープなMIDIを容認しのが、鈍感化の発端だったかも知れない。
因みに結局俺はMIDI接続のレイテンシに今も慣れられなくて、パラメータ変更や同期させる以外には使ってないや。(打込み系のデータとしては頻用してるけど…)
<つづく>
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