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2022年2月 3日 (木)

音楽備忘録903 録音でのプロとアマの違い⑫

今日は現業界に楯突くつもりじゃないが、ウチの録音ではミスの有無よりらしさや魅力の多少を優先してる件を。
今本邦じゃそんなの独善的にしか映らんだろうが、大元はプロ中のプロが手掛けた名作にはそんな傾向のの方が多かったからなんだ。

非情に言っちまえば演奏のミスは奏者側の責任でもあり、録る側の最大の責務は一世一代のパフォーマンスの「良かった部分」を死守する処だと思うんだ。
1980年代等にホントは打込みにしたかったが諸事情で人力生なんて際なら、ミスレスに執心するのもまだ分かるんだけどね。

その代り不充分だったとしても極力パフォーマーの方には気持ち良く作業に望める様には心掛けてて、何処かの底意地の悪い奴みたいにわざと不要な圧を掛けたりゃ絶対しないずら。
私的にはこの価値観がプロ固有のものと考えてるんだが、他にも具体的な理由があるんだ。

奏者が録るのも兼任すると集中力を削がれたり、気になってミスるってのもあるだろうけどさ。
人間が対機械比でエラー頻度の高いのからするとミスだけについてなら、環境よりもチャンスの多さの方が貢献度が高いと考えられるん。

それには期限が無いか自由になって、ノーミスで録れた日が完成期日に出来るアマの方が圧倒的に有利なんす。
録るのも自前で行くにはそれなりの環境だって要るし、途中で幾つか訪れる壁も越えてかなきゃなんないけどね。

そんなのより他人力がモノを言うのが魅力の判定で、魅力って万人に共通なのの方が少ないからなんよ。
演奏ミスの有無はフレージングに瑕疵が無い限り、毛すら生えて無いアマにもベテラン重鎮にも同じ様に分かって判定が下せると共通性は100%に近い。

で仮にちっとも求めてないのに妙にエロい魅力に満ちたのが録れちゃったとして、スタイル的にどうにも不許可ならお蔵入りにしちゃっても仕方無いけどさ。
折角良く出来てるのを軽視するのも勿体無い話しだし、持ててる資質がそれだけだったなんて事もあり得るんで。

夢にも思って無い結果が出たらその時点ではガッカリするだろうし、下手すりゃあんなに頑張って来たのにこれならもういいやなんて投げ槍になるかも知れない。
けれどもし本当に○○な音を出したいとか表現を手に入れたいと思うなら、喰らったのが駄目出しでも何も無いよりは俺言い「49%の幸運」なんだよ。

最もゴールが遠いのは「その人の場合どうすりゃ良いか」が全く見えて無い状況で、既にゴール寸前に到達してても残り僅かを進められないですから。
ほんでそれがアマなら惜しかったで済ませても良いが、お仕事ではそれじゃあ不味いし困るからねえ。

まあ録音技師がどの程度プロデューサの責も負ってるかは様々だが、音楽録音では興味を持って貰えるだけの美味しい音になってるかは外すべきじゃない基準だと思うんだ。
特に機器類の操作に昔程は熟練者が要求されなくもなったんで、必然的にプロデューサ要素は高まってるんじゃないかな。

但しここでのそれは一応サウンド限定で、これが不足してると最適じゃ無い録り方をやらかす等の危険がある。
生楽器で爆音なのが魅力の人のだったらそれが分かる様になってないと仕方無く、アンビエントやOff Micレスにするのは相応しく無いとかさ。

依頼者の希望は汲めるだけ汲むべきだが、「お求めの音って殆どのは○○に録るとそうなります」なんてのは煙たがられたって決して余計なお世話じゃねえんでがんす。
アマはどんなにそれで失敗しても元のアマのままで居られるが、プロだとアマに出戻らされる可能性だってあるっしょ。

<つづく>

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