音楽備忘録634 残響考⑮
今回はEchoの明瞭度に及ぼす影響をテーマに進めるが、Echoって基本的には殆どボカす方向にしか働いてくれない。
それからすると近年本邦の明瞭度至上主義の癖に「何でもEcho」って物凄い矛盾で、これぞ無理な注文ってもんだ。
こんなになったキッカケを想像すると、On Micの音が流行ったのも一因かも知れない。
例に依って私的見解の域を出ないが、On Micってそもそもは録音や音響機器の劣性を補うのから始まってんだ。
機器の他にもお馴染みの人耳弁別能の関係もあるが、兎に角その場で聴こえたのより録ると昔は何でも大抵ボケちゃってたからねえ。
なのでもう今は昔みたいな必要性は無くなったんだけど、単純に聴き比べをするとOn Micの方が明瞭で細かい所迄良く分かる。
考え様に依っちゃこんなの中毒の一種も同然で、けど平均的奏力が落ちたからか次の一歩に自分が先に踏み出すのを躊躇して皆でお互い牽制しあってでも居るかの如くだ。
とは云えMulti Micの威力は別録りや独り多重にはニーズが高く、俺自身だって環境以外の事情でも多用しちゃってんだけどね。
その程度の奴が偉そうに語れる事っちゃ無いんだけど、本来はどうあるべきかを知ってるだけでも結構差が出るんすよ。
それは目的と手段の優先順位が、間違ってひっくり返るのを防いでくれるから。
劣悪環境のLiveから遠ざかって録音ばっかやってたりとか、そうじゃ無くても最近だとPAレス実体験ってのが稀もいい処だかんね。
かなり何時も強く意識してないと、どうしたってMic以降の機器に頼りがちになっちゃってるんだわ。
この点始めたのが近年の人は可哀想で、本番(Live)では楽器にもPAがある状態しか体験出来なくなってるからなぁ。
まあそこで使える楽器のタイプにも依りはするけど、伝統的な3段積みMarshallとかって本来はそれ自体がPAを兼ねた設計になってるん。
そりゃ設計想定以上の大会場だったらMic構えるのもアリだけど、少なくとも非コロナ時で客席1,000人位の規模迄だったら3段積みにOn Micなんて却って音質劣化させるだけで余計なお世話なのだ。
そしてそんな作りのだと会場Echoとの関係にも違いがあって、良く響く(それも低音程)程他のと違う明瞭度を発揮してくれるのだ。
それとは逆に後面開放で一体小型のAmpだと奏者至近では自然な感じでも、広い所でMicレスだと遠くじゃモヤモヤになる。
これは裏を返せば会場の響きが少なくても、色んな「鳴り」が聴こえて音が淋しくならない様にしてるのも嘘じゃない。
録ったのにEchoを掛けるのに想定空間にも依るとは云え、前者の過去称「ステージ用」のは「想定された使われ方」だったら入ってるべき残響が無いのに先ずはご用心だ。
Classic系では一般非公開でもホールで録るのがポピュラー系より多く普通なのはこの為で、天然Echoしか無かった時代に作られた曲には人工的な響きより自然なのの方が合って当然だ。
創作物には「わざと」ってのも付き物だから禁忌事項にこそならないが、本来の姿を軽く見てるとミイラ取りがミイラになり易い。
付加残響が明瞭度を劣化させる原因には他にタイムってのがあり、ソースに入ってるそれとの差が小さい程例の厄介者「位相」問題を起こし易いんだ。
一定以上の差があったら完全分離するから分身の術様となるが、少ないと撮像時の「手ブレ」の音版になるってな按配ね。
それを避けるべく付加機器の設定で頑張ったとして、それが想定通り機能して貰えるのは生の方が完全に一定だったらだ。
室内残響は余程広大じゃ無い限り無人ならまだしも、そこに居る人が僅かに動いた位でも微妙な違いを生じる。
只聴いてるだけならそんな些細なの実用上は無害だが、デジリバで設定したパラメータは通常全く変動しない。
のでこの違いのせい等で仮に全体的には位相問題が出ない設定にしといても、部分的に意図に逆らっておかしくなっちゃったりもする。
これはソースが非生の打込み音源でも慢心は出来ず、空間響き含有度が高い程注意しないと後で泣かされる。
是又俺知り範囲限定だがそれは音源のサンプリング数から来ていて、出せる音の全てのサンプルが用意されてるのなんて先ず無いからだ。
サンプルそのままだと音程の合わない分は原理的にだと、昔のレコードやテープの速度をズラすのと同じにして出している。
すると音程のみならず程度が僅かでも、残響が入ってたらそれも一緒に伸縮しちゃってんのよ。
天然由来のよりゃ調べて計算すりゃその範囲は特定可能だけど、固定じゃないのに変わりはない訳で「その時だけOut」になるのが避けられないんだ。
<続く>
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