音楽備忘録616 残響考⑨
前回迄天然系残響の話しが続いたんで、ここらで変えて人工の方へスポットライトを当ててみよう。
近年のデジリバに俺はご縁が無いのが難点だが、体験からはデジタルの方が安物だと正式な録音にだと実用性が低かったと感じている。
どうも本邦メジャー系では’80年代中盤に登場して以降、只ひたすらクリアに響いてさえいりゃ良いかのような状況に陥っている。
確かにアナログ系のしか無かった頃よりゃ雑音面や周波数特性等に格段の向上があったが、まるで容姿だけで選んで結婚したら性格は最悪だったみたいなみっとも無さだ。
私的分析に依るとその元凶は、体裁に忖度し過ぎて本来の目的を見失ってる様に伺えた。
素人がどうにもならない歌唱力を補うのにエコーを欲しがるなら分かるが、結果的に大の玄人が殆ど同じ事をやらかしちまってるんだから恥知らずに他ならない。
俺自身技師でもあるので仮に無理にそれを擁護するならば、仕事量(種類)や選択肢が増え過ぎたのも敗因な気はする。
一寸回り道になるがかつて本邦では録音やMixでのEQ導入がかなり遅れ気味で、それ自体は保守的過ぎて当時は残念だったけどさ。
過去述だがMixer卓自体にEQ非搭載の方が主流の時代も結構長くて、PA系メーカで’70年代中盤・オーディオ系大手では’80年代に入ってやっとどれにも付く様になった有様だった。
なのでこの点だけで見るとお淋しやだがそのお陰か、マイキングの平均技術レベルは当時の方が高かったんだな。
それを実感したのはかなり後になってからだが、技師側ではそれでしか音色の調整が出来なかったんだものね。
で時代が下る程劣化傾向が強まってまだ歯止めが効かないで居るが、「デジリバやEQで誤魔化せる範疇」なら良いだろうなんて怠惰思想が蔓延しちゃってるからなのかねえ。
そりゃ違う時代(手法)のと比べなきゃボロが出る迄に少しは間があったりするが、本来の優先順位が真逆なのはこの先何時になったって不変のままなのだ。
だってそうでしょあのジャイアンの歌にエコー掛けたら少しは耐えられる様になるのかってなもんで、つらい物だったら時間だろうと量だろうと僅かでも少ない方がまだマシやんけ。
そしてこの段階で順番を間違えるとエコーの音質に関しても、音楽的なのよりオーディオ分析的な面にばかり気を取られ易くなるみたいなんだよね。
つまりオーディオ耳は従前よりグレードアップしてても、音楽耳が劣化処か最悪は無くなっちゃてんだわ。
確かにⅡで昔より機器が低雑音になれば、昔より「余計な音」に神経尖らせてないと後であぁっなんてなり易くはなってるわな。
もしそれで一杯一杯になっちゃったんだったら立場的には情けないけど、もっとミュージシャンに選ばせたって良いしその方がマシになると思うんだ。
そりゃ非専門家なんかに選ばせたらオーディオ的には問題の多いのになったりするかも知れんけど、音楽的な効能が無いとか足りないんなら余計なの足してもしょーがねーんだぜ。
演劇系の演出だったらそんなのでも多少は役に立つが、どんなチープなのだって音楽だったら一応芸術そのものなんだからさ。
ってこのままだとまるで芝居を芸術から外してるみたいに誤解され兼ねんので補足させて頂くと、場面演出って面では同じだが芝居なら音より強力な視覚その他もあるからだ。
割合は夫々0~100の範囲でSEとそれ以外の合計で100%に届きゃ良い訳で、何らかの事情でエコーは別の所のしか使えなくても背景をそれらしいのにでもすれば最低でも「武道館みたいな場所」なんてのが表現可能だ。
それが音でしかやれない音楽の方だと最悪は本物の武道館のエコーを使ってすら、座席位置が違った人にはちっともそうイメージして貰えなかったりもするんだから。
美しさだけで良いなら話しも違って来るが、それ故エコーの「らしさ≒ニュアンス」の責任はとてつもなく重くなるのだよ。
そんなだから個人的には夢のまた夢だが、リアルの鉄板Reverbが欲しいと願っちゃう。
不精者の証しみたいになっちゃうけど、エコーの種類で毎回逡巡させられるのがもう面倒なんだ。
だいいち現況ではそれが備わってるリスナーは僅少だけど、掛って無くても後から追加する方は可能なんですよ。
最初から掛っちゃってるのを無劣化で取除くのと比べてご覧なさいよ、どっちでも良いから「掛けとくか」じゃ幼稚過ぎるのよ。
エコーってとっても魅力的だからこそ誰だってつい何にでも何時も掛けたくなっちゃうけど、それやっちゃっうのってアル中や薬中と一緒なんだぞ。
一緒ってぇからにゃ案外自覚がし難くくて、せやからなるべく酷い中毒に陥る前に踏み留まれると良いんじゃないかな。
<続く>
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