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2021年2月13日 (土)

音楽備忘録548 魔改造悲喜こもごもⅢ-①

少し久しぶりでBass用球ポータブルPreampの続報へ戻るが、どうも下らない処でつまづいてばかりでイカンですよこれが。
折角電源案件をクリアしたってのに、それでもまだマトモに動いてくれない体たらくある。

漸くその原因が発見出来たので嬉しさのあまり書こうとしたが、回路自体の説明が無いままではどうにも表現のしようが無いのに今更気付いた。
ので暫くはついでのも含めて、楽器用増幅回路の話しをさせておくんなまし。

電気楽器奏者には未だ根強い真空管信奉者も少なく無いが、否定する者も居るのの最大要因は実は増幅素子自体の違いでは無いからなのだ。
それが過去述の「負帰還増幅回路」ってので、コイツは電気物理性能は優秀だが楽器用としてはニュアンス面で不向きなのだ。

幾つかの理由で真空管回路ではこれが必要最低限しか使われず、石系(半導体)の回路では一部例外を除くとふんだんに使われている。
その例外とはオーディオヲタ様向けの各部品迄厳選した様な逸品で、電気物理性能より音楽的性能に拘った部類のだ。

もう1つ上記のとは全然毛色が違うが、楽器用のにもそれに近い回路構成のが昔はそこそこあった。
半導体登場黎明期にオーディオ用のだったら、部品メーカ側から参考若しくは推奨回路の提示もあった。

が楽器用の方は全く手付かずだった為、取敢えず球の回路の素子だけ石に挿げ替えた様なので凌いでいたからだ。
これ迄に石のでも定評のあったAmpの殆どは、最低でもパワー段はそんな設計になっている。

それ等の印象が強く球のでも変に新しぶって音色を悪くしたのと比べちゃってたら、石に肩入れするのも自然ってね。
尤もそれって残念乍ら「球の真価」を体感し損ねてるんだけど、その人にとって石でも充分だったら他人が口を挟んでもしょーが無いかな。

続けて上述の理由に進めるが、その1は部品のコストとサイズだ。
球のでも過去には精密測定器等には負帰還は多用されてたが、石系より増幅率が小さ目な球で組むには数も規模も大袈裟になってしまう。

石系ではこの問題が無いので遠慮の要らないのは結構だが、楽器用や音楽用に限定すると弱点もあるのが理由その2だ。
黎明期のや極々一部のを除き素子開発時点から、石系では負帰還回路の使用が半ば前提となってしまった。

ってのも1つの素子に対する汎用性を追及すると、最大増幅率は大きい程良い。
球ではそれが困難だったのが石では可能化したのもあって、要らない時は負帰還を掛けて増幅率を下げれば済む。

具体例としては球では1発だと特殊回路にしないと極軽い歪みしか得られないが、オペアンプICならたった1つで普通のDistortionが作れちまうって具合だ。
故に特別な理由が無きゃ石の方が良いんだが、負帰還ってな「後から直してるだけ」って欠点があるのだ。

それが音楽的にだと主に「音色が源のより硬く」なって現れて、特に制作現場ではそれに大きく困らされるのである。
その「硬くなる原因」は極僅かでも時間的遅延が加わるからで、「出口で間違ってた」分を入り口に戻す際にどうしても発生してしまう。

性能的に時代遅れでも楽器用等で古い回路が重用されるのは、このリスクが最小限に出来るからなのだ。
なので球の回路でも下手に進歩的で小利口なのをやらかすと、この利点は弱まってしまう。

それに最初に気付いたのがあのBoogie辺りで、当時は最大手だったFenderやAmpegが衰退したのは「新しさの魅力」に負けた一面も大きい。
但し古典的にシンプルにするのにも限度があって、例えばPreampの場合出力インピーダンスをある程度以下迄下げなくてはならない。

もし楽器用パワーAmpにしか繋がない前提なら不要だが、一般的には寧ろ非楽器に繋ぐ場合の方が多い。
それに必須の電流増幅回路は電圧増幅のと比べると球でも硬目になりがちだが、出力トランスを用意出来なきゃ最終段だけは使わざるを得ない。

現代ではトランスが高価になった上希少用途のは選択肢も僅少なんで、俺みたいなのにとっては殆ど無い話しだ。
それで実際構成するのに何本・何段必要になるかがスタート地点だが、音色を弄るには通常電圧増幅が最低2段要る。

先ず楽器本体搭載のと「違うTone回路」とするのには、楽器とPreampのTone回路の間に1段入らないと駄目。
更にそのTone回路が所謂パッシブタイプなので、そのままじゃ低出力過ぎるし後と直結では繋いだ機器の影響を受けて音色が変わってしまう。

のでもう1段とこれだけで電圧増幅が2段になるが、前出のインピーダンスの事情で電流増幅もその後に1段要る。
のでⅡで都合最低でも3回路要るが、この手のに一般的に使われる球には1本に2回路入ってるからそのままだと余り1になるのが勿体無い。

<つづく>

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