音楽備忘録545 パートのリズム調節㉔
前回提示した2組にもコードカッティング以外のもあるんで、続編としてそれにも触れとこう。
こちらでは両者に少し違いがあって、T・REXの方は他パートに委ねるケースが多かった。
本邦ではT・REXのMarc Bolanに対して根強い「下手っぴ説」もあったが、それが理由で簡単なのしか弾かないと何時迄も信じ込んでては核心に迫れない。
かなり何時も変ちくりんな音を出してたのが誤解の元らしく、実際ソロパートでの音使いにも理論を無視した様なのも散見された。
だが理論にも段階ってのがあって汎用なのの他アブノーマルなのもあり、深読みすれば必ずしも知らなかったから間違えたからそう弾いてたなんて簡単に断定しちゃ拙速だ。
なのにそう思われたのは曲がとてもPopだったからで、俺言いすれば「お子様ランチにタバスコ」状態だったからと思われる。
T・REXの編曲はCCRのより実は大編成や外注のも多かったが、聴いた印象がシンプルなせいで本人が関与してないと勝手に思い込んでんだろう。
この誤認は正確にコードを拾おうとすると解消するんだが、彼のコード使いの特徴に「意外な処でマイナーコード」ってのがある。
それを明確化させるのにStringsに意図的に短3度音を弾かせてるのが多く、こう云うのは作者主導じゃ無いと中々実現出来ないもんなのだ。
かつて数曲位俺は「T・REX風サウンド」にしようと画策した際、彼等のには上記の意外な処でマイナーコードと Stringsの存在が鍵を握ってるのに気付かされた。
ノリの良さではかなり高得点でも、弾いてる内容はたった1つの変態を除いてシンプル且つ在り来りなのしか無い。
そのノリにしたって種類的にはちっとも珍しく無く、例外の変態は時々しか顔を出さないからそれらしさとして依存するのは不可能だ。
これ等からすると作者は当初から、Strings込みで作ってったと考えるのが妥当じゃないかな。
あとStringsの音使いが編成の大きさに対してかなり限定的で、音使い的に近いので俺が思い出せるのったらHi-Recordのとかかな。
Hi-Recordのは金管も入っちゃいるものの、管も弦も和音構成上最低限の頭数しか居ない。
T・REXのStringsで重複メンバーを多くしてるのは、そのサウンドに雄大さ等スケール感を求めた為の様だ。
処で上で「例外」と書いたのはアンサンブル内での「Joker役」の事で、これは基本的にMarc Bolan本人だけが担当する様に決められてた様だ。
俺がクソガキ当時リリースされて瞬時に嵌った曲でこれを例示してくが、「Solid Gold Easy Action」ってので私的には今でもおバカRockの最高峰と感じている。
Introからいきなり奇妙なVibratoを掛けGurissandoも使われた「和音弾き」が登場するが、スーパーヘビーリスナー且つ感性派の俺が50年近く経っても完コピ出来ん代物だ。
これが難物なのはニュアンスだけで再現しなきゃなんない処で、それが本人の個性のみで出来上がってたからだ。
この方面ではローリー氏がかなり良い線迄行けてるが、本家と違ってマトモな音に聴こえちゃうから至難の道かも。
総括するとMarc Bolanって奏者は、地味だかとても堅実な伴奏と怪奇音発生装置の二重人格みたいなのだったらしい。
その2極間が中抜けで完全分離してるもんだから、得体の知れない存在扱いされちまったんだろうな。
しかし「曲を正しく伝える」のを主眼に据えると、これは最も理に適った手法だ。
他所で類例が目立たないのは恐らく「類は友を呼ぶ現象」のせいで、生真面目グループ・ヤンキー軍団みたいな固まり方をしたがる人が多いからだろう。
その場合Joker役が持ち回りになるんで、各々のマトモ弾き対変態弾きの時間的割合で変態のが激減する。
故に「Marc Bolanの味」を獲得出来るのは、元から似た個性を持ってる者に限られてしまう。
んが枠を広げてT・REXみたいなアンサンブルってんなら、前述のツボを押さえられれば誰にでも取入れられる筈だ。
<つづく>
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