音楽備忘録425 音色の過剰演出とはⅤ
本題からはかなり遠のくので番外編とでも思って貰うとして、Beatlesのお客の半狂乱のお嬢さん方の音量が何dB(デシベル)かの推定計算でもしてみよう。
安直ググりだしそもそも結構人声の最大音量は巾が広く、100~120dB位らしいがどうなるやら…。
上記はコンテストのチャンピオンのとかなので、取敢えずは一番低い方の100dBを1人分としてみよう。
観客総数も巾が広いので是又取敢えず1万人とすると、単純計算では何と140dBにもなると出た。
尤もこれだけの人数になると場所的にかなり分散するので、実際には全体のエネルギー量は膨大でもピークはもう少し小さくなる。
そこで1m四方に入れそうな人数を基に計算してくとして、4人として106dBだ。
1m四方としたのは音の距離減衰との兼合いからで(後述)、1m離れると6dB音源より小さくなるからだ。(この場合だと音量は丁度半減、増加の場合は倍増)
つまり1m離れると4人居ても隣接ブロックのは100dBとなり、ひたすら大雑把だが真隣にたった1人居るのと同程度になる。
するとこの1mブロックに全方位囲まれてたとして、周囲8ブロックからは夫々100dBの声が押し寄せている。
6dBの差があるのを1つだけ足し算すると、デシベルだと1しか増えないから107dBとなる。
それが8つあるから合計するとお嬢さんキャーは、ざっと114dB程度って事になったよ。
厳密には4人だってその間に距離はあるけど、概算だし面倒なので端折っちまったい。
ってのも50cm(0.5m)では3dB減衰するが、音量としては半分迄小さくはなってないのを加味しての事なのだ。
半分とか倍位に変化しないと「確固たる比較対象」が無き時は、人は音量差を明確には認知し辛いんでね。
さてとなるとお嬢さん方に楽器の音がPA無しで最低限聴き取れる為には、これ等に依れば114dBより6dB上回る120dB必要って事になる。
ここで注意すべきが音源から観客の耳迄の距離で、1万人収容となると会場自体も広いが舞台の奥行きだって大抵は結構なものになる。
これを最短に見積もっても楽器から舞台前端迄3m、そっから客席前端迄2m位は確実に要すだろう。
けどこの値はアリーナ最前列の場合でパフォーマーとの間に誰も居ない特異なケースなので、取敢えず3+2=5mへ更に2m追加して都合7mの想定としてみよう。
7m離れると約17dB減衰するので、客耳120dBなら音源からは127dBは出せないと楽には聴き取れない。
物にも依るが楽器Ampのスピーカトータル能率を大凡105dB(1W入力時)として、不足の22dBはヘッド出力で稼がねばならない。
これが出力100Wを持ってして上乗せ出来るのは20dBなので、番町皿屋敷じゃないがまだ2dB足りない。
dBとWでは比率(dBは対数・Wは唯の掛算)が異なる故、たった後2dBでもなんと約160W無いと到達出来ないのだ。
せやさかい折角100Wを登場させた処で爆「キャー」の前では、ギリギリで聴こえてせいぜいコードのルートが分るかってな程度だった訳やね。
Beatlesより少しでも後のCreamで200W Marshall、The Whoは400W Hiwattにしたのも客層を考慮すれば(前者様失礼仕った💦)妥当な処。
そこ迄して静かとは程遠いにせよ、PA常用の今みたいに耳を手で塞いだって聴こえる様な音量では無かったと。
但し元音が今みたいに過大じゃ無いとなれば、会場の残響等は今より実感し易かったのは間違い無い。
聴き取り易さでは当時のは今より格段に劣るけれど、演ってる場所の音(響き)はより堪能出来てたと言える。
その部分こそが音楽にとっちゃ「天然の演出」で、会場毎の特質が丸々お客に届いてたと考えられる。
今PAのお陰で何時でも何処でも同じ音が聴けるのは公平ではあるけれど、小規模Livehouseとドーム球場での音場的な差が少なくなり過ぎるのは微妙な処だ。
有るべき天然の演出を完全に無くすのも不可能なのに、無理に減らした結果「物足りなく」なって何か余計な演出を追加しなきゃなんないんじゃなぁ。
これからすると音色過剰演出には、あるべき物を減らし過ぎたのも一因なのかも知れないと思った。
<つづく>
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