音楽備忘録393 半導体 vs 真空管⑥
球(真空管)の大雑把・いい加減とは性能のバラツキが根源だが、石だってディスクリート(非集積素子)だったらそんなに大差は無い。
のになんで実用上かなりの差が出るかったら、回路に対する考え方が正反対に近いからなのだ。
取扱いがシビアになっても正確無比なのを望めば、もう石でしかそれは殆ど不可能だ。
純粋な技術面だけなら球でも似たのは幾らでも組めるけれど、コストや大きさもだがそれ以上に消費電力と排熱量の多さが個人では全く手に負えない。
結果的に球を使いたきゃ石より古典的・原始的な回路で我慢を強いられるが、回路構成・方式の選択だけで所望の音色は得られるもんでもない。
それは石だと「音の良い」或は音楽用途に最適な部品の供給に難が多く、極一部のニーズが安定してるの以外はすぐにディスコンにされちまうからだ。
出した時点で好評を博しても、あから様な進歩・進化が無いとメーカが使ってくれんのですわ。
これは音色的に決定打が中々出せないのと、「今迄に無かった物」であれば既に所持してる人も興味を示す等に依ってると思われる。
実は球しか無かった時点でもコストその他を度外視すれば、素人に分かる程の性能差は今の石のと大差無い処迄既に到達していたのだ。
なので余計に大きさ・重さ等の外見だとか、機能・コスト・電気的性能等の「数字」で差を強調するしか無くなってるのよ。
勿論それ等だって使える環境がより自由なるとか、お手頃価格になるとかご利益は大いにある。
ので球ヲタとしては敢えて「石の利点」を以下に綴ってくが、同時に「盲点」も併記しとくから各自良くお考え下さいましよ。
①増幅素子の内部構造上石のは基本的に封入完全固定されてるから振動に強い
②発熱・消費電力共石の方が最低限を低く出来る
③小さく軽く出来る
これ等からすればポータブルタイプには圧倒的に球より向いてるが、カーオーディオ用として考察してくと必ずしも額面通りとは行かなくなって来たりもする。
ので、ここから上記夫々に秘められた盲点を列記してみよう。
❶❸小さいが為に「素子の足」等は案外弱い
❷小さい故に放熱が不利になるのと、アイドリング時とフル稼働時の差が極端に大きくなる場合が多い
❹概述だが増幅素子だけ適正に勝ってても周辺部品のせいで必ずしもそれを活かし切れない
続けて内容面へ迫ってくが①についてほぼ忘れられてるのが、最早絶滅同然だが球にも低圧・高耐振動のがかつてはあった処。
このポータブル用の球は今では性能・入手性・コスト等に難があるからほぼ幻だが、これからすれば原理的に一概に球が不利・不適とは断定出来ない。
❶❸に関しちゃ体が軽けりゃ足が貧弱だってへっちゃらになっては来るけど、汚れや熱(温度差)等からの劣化マージンはかなり少なくなっている。
更に足自体の他それが付けられている部分の耐性に差があって(主にガラスや金属[球]か樹脂[石])、石は折角中身が丈夫でも黎明期の金属筐体のと比べると強さがアンバランスになっちまった。
②❷については設計マージンがモノを言うんだが、業務用PA等と違うのでどうしても小ささ軽さが優先されがちだ。
なので屁理屈全開だが最悪はオーディオ機器自体は何とか無事でも、隣接機器を熱でやっつけちまうなんて事も。
放熱は小型化させる程機器全体表面への依存度が高くなるが、小さくなりゃ狭い処へ押込められるのが常になる。
これが車載じゃ無きゃ機器周辺の空気が自由に動けるケースが多いけど、ダッシュボードなりセンタコンソール等まるで「机の引き出し」に入れっ放しで使う様なもんでんがな。
何しろ只点けただけとか軽く鳴らしただけだったら幾らも熱くならんので、設置時にそれがとても予測し辛い。
過去体験では機器は平気でもこの熱さのせいで、カセットテープの寿命が極端に短くなったりしてましたよ。
❹については石回路の諸悪の根源!?たる電解コンデンサ等は短寿命で、なまじ小さく込入っててハンダ付けされてるだけに球の交換よりかなり面倒だ。
おまけに電解コンデンサは熱にちっとも強かないので、直ちには壊れなくても熱い高温環境で使われる程寿命は露骨に短くなっちゃうんだよねぇ。
とは云え車本体の寿命や経年での税額増加等もあるから、今時余程のヲタ氏以外に球を勧めたりゃしませんがね。
でも上記の様な実態なんで石だったらかなり他方面に亘って、余裕を持たせた使い方をしないとリスキーには違いないのよ。
<つづく>
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