音楽備忘録401 半導体 vs 真空管⑩
ではエレキBassの「気付かれ難い歪ませ」を例示してくが、関連性の高い録音音質についても併記して行こう。
後者は特に石での歪ませ活用を困難化させたが、それが何故かから始めよう。
石の歪ませで生じる刺激的で音程調和性の低い奇数次高調波、しかし使い様に依っちゃ却って功を奏す場合だってある。
Fuzz等がその典型で音程に直接は関与しない倍音が付加されるので、意図的な音色改変等には効果絶大だ。
だからこそ基本音色を変えたく無い時は困るんだが、それでも高域を削ってやればそこそこマイルドには出来る。
しかしそれには普段より籠った感じになっても許容せねばならず、録音やPAの音質が向上して「生より籠ったりしなくなった」今では他楽器の特に生楽器との整合性が苦しくなった。
もし若い元気溌剌Drummerとヨレヨレ爺Bassなんて演出をしようってんなら良いが、パートに依って極端に時代が違ってるってのは普通は気持ち悪くていけねえ。
それプラス奏者のアクの強さも大いに関係アリで、昔より皆スマートになったは良いが個性の弱まりは細かい部分の相違に対して脆弱化している。
ではⅡで例示へ参るが、最初はDonald ”Duck” Dunnだ。
彼の場合一番有名になった作品の録音は、少なくとも録音現場的には基本チープ寄りだった。
なので意図的に歪ませてたかは大いに疑問だが、相棒DrummerがパワフルなAl Jackson .Jrにも拘わらず100Wに満たないAmpの使用が多かった。
それなのにそんなに小さくは聴こえなかったのは、球だから少しの歪みを許せば額面以上の出力が得られたのもあるがやはり音質に鍵があったと睨んでいる。
聴き始めてから随分長い事気付かずに居たのは俺様杜撰大王の面目躍如だが💦、最近になってヘッドホンで聴き込んでみたらフォルテの所はほぼ皆歪んでるじゃありませんか。
尤もJack Bruceみたいな下心!?は無いから、その手のと比べたら恰も「歪んでないフリ」をしてた様な感じだった。
ここで重要なのは「フォルテの所は」で、こう云う場合他のパートも倍音は普段より多く出してますとなってるのが肝だ。
つまり全体が普段よりBrightになってるお陰で、Bassが少し位高調波歪みを出しても全然突出しないのだ。
寧ろアンサンブルとしてはそれ位じゃないと、皆で盛り上がってるのにBassistだけそれを無視して冷静みたいな感じになってたかも知れない。
そもそも楽器音は強い処ではそれ以外のより若干荒いってか汚くなるのが自然で、これを排除すると音量の上下だけでしか強弱等を表現出来なくなってしまう。
実際に’80年代に電気楽器ならLine録りが適正無視で大流行しちゃってたが、小奇麗になったは良いが何とも迫力・説得力に欠ける結果を招いていたのが多かった。
中でもLine録りが一番難しいのはピック弾きので、俺知りでこれを打破してたのはAtlanta Rhythm SectionのPaul Goddard位しか思い当たらない。
それでかこれの補完にはそれ迄より概述の「Pickupの磁界歪み」が重視され出したが、これだけでAmpの分迄補うには至っていない。
考えてみりゃ上記Duck君のは、元から両方ともタップリ活用されてたんだからね。
Paul Goddardの場合も未確認だが敢えてトランス式の古いDIをとか、何らかの球機器を上手に駆使してた可能性が高い。
しかし一番Ampとは違う感じが得られるのは石系だけでの直結で、従来のとの差の強調を優先してたのか当時のはそっちが主流だった。
ではⅢで石の歪みを上手に活用してたのとして、次にYes初期のChris Squireの音色をプチ解析してみよう。
簡単に云や高域のアタックだけなるべく歪んで、低域はなるべく歪まない様にされている。
その音色は当時のBassとしてはかなりBrightだが、現代基準でだと高域ってよりゃ中域の一番上だけグッと持上げてそこだけ歪ませた様な按配だ。
’60年代末期当時はBass用スピーカに今みたいに高域の出るのなんて無くて、これが石の歪みの耳障りな部分を偶然削ってくれてたってのが真相だ。
折角リッケンを持ってる(ホントは借りてるだが)ので時々これのごっこをして遊んでみてるが、イメージより高域をCutしとかないと例え球で歪ませても本家より汚くなる。
その上周囲の音が現代のだと原典に反し案外少し籠った感じに聴こえ、とても魅力的だがそのまま取り入れるのは難しい。
<つづく>
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