音楽備忘録387 音楽を演る人にとってのリファレンスヘッドホンⅡ
前回このニーズには寿命が最優先と述べたがその実態と、音質的にはどんなのが向いてるかへ言及して行こう。
ヘッドホンを機器全体の中でどれ位の大きさに分類するかは人次第だろうが、防波堤のテトラポットみたいに大きく頑強じゃ無いのは明白だ。
となりゃ誤って破損させた場合にも配慮が要りそうだが、それで行けばロングセラーで普及率の高いのが向いてるだろう。
本邦でだったらそれならSONY CD-900STが先ず最有力候補に上がるだろうが、俺としちゃ✖じゃ無いが△だと思っている。
それはイヤーパッドの寿命が短過ぎるからで、職業PA屋が持つのと奏者が持つのでは条件に違いがあるからだ。
PA屋にとってのCD-900は、例えばGuitaristだったらGuitar本体みたいな存在だ。
メインの道具となりゃしょっちゅう状態確認はするし、利用頻度は高くその間隔も短い。
これで恐らく奏者とは大差が付きそうなのが「健全時の体験量」で、正常時が身に付いてれば僅かな異常も発見し易くなる。
しかし奏者で担当楽器の状況から利用頻度が低く間隔が長目になる様だと、普段の記憶がおぼろげになるから劣化の初期段階がとても掴み難くなる。
して掴み難いと不完全状態の音の方を多く長く体験しちまうから、同じと思ってて実は変化しつつある音を耳にする事となってしまうのだ。
なので例に依って若干変態思考だがこの問題を避けるには、もしイカレるならこの際思い切って一気にポックリ逝ってくれた方が却って好ましいのである。
この点ではなるべく古典的な材質や構造になってると有利で無演出な音色と併せ、俺がKOSS PRO4AA(俺言い別名「軍隊ヘッドホン」!?)を最後の手段としてるのはその為だ。
CD900が俺としては少なくとも奏者用として不合格な点を、以下に列記してこう。
①イヤーカップハンガーがプラ製
②イヤーパッドが劣化し易くそれが把握し辛い
③耐入力に一抹の不安がある
では順に詳説してくが①で一番懸念されるのが、イヤーカップに刺さる「棒の部分」だ。
体験としては皮肉にもそれはKOSSの現代タイプのだったが、力の掛かる向きが直角になる事が多いせいで意外にも他より先に折れちゃった。
これは力学的分析を試みるともっと盛大に太さと周囲のゴツさが要りそうだが、デザインの他イヤーカップに開けなきゃなんない穴の大きさと隙間の都合でそんなのは望み薄か。
②は概述だが保守経費が嵩むのもだが劣化の程度が把握し辛いのが困り、お間抜けでも一応ベテラン専門家の俺でこうなんだからそうじゃない人にだったらもっと厳しいだろう。
③に関しては必要音量に対してなら充分だが、誤って大出力に繋がれたら一発アウトになる処。
非専門化だと使用者側の認識不足が第1の原因だけど、売る方だって客が気にして無きゃ普通に使えればちっとも注意を促さないのも問題だが実情だ。
長く使ってればヘッドホンAmpとか相手側が当初とは様変わりする可能性も高く、その組合せが非一般的になったりすると情報が得難くなる。
そこで両者のデータをちゃんと見比べてくれりゃ良いが、長年ずっと大丈夫だったからと疎かになっても人情的にはその方が普通。
音質面では現代本邦では録音現場等で多用されてる点では、CD-900だと何時も通りに出来て確かに良い。
が個人用のリファレンスが同一だと便利なのは、今や絶滅危惧指定!?の所謂Studio Musicianだけだ。
敢えて俺言い「皆一緒主義」の人へ苦言を程しとくと、それならヘッドホン以外の全ての機材も同等化しないと意味が無いからな。
ヘッドホンの音色ったって駆動する機種が違ったら、当然違う音になってるんだからね。
因みに折角だから一番世界でポピュラーな駆動方式を付記しとくと、「074ってオペアンプ」と「2SC945・2SA733ってバイポーラトランジスタ」を組合わせた回路が該当する。
この方式は極最近は専用ICの増殖で少し減りつつあるが、有名ブランドのMixer卓のヘッドホンOutの多くがこれで構成されていた。
<つづく>
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