音楽備忘録390 音楽を演る人にとってのリファレンスヘッドホンⅢ
今回は奏者用リファレンスとしての適正音質を掘ってくが、どんな用途だって耳ざわりが良いに越した事ぁない。
でも奏者はヘッドホンに与える音自体を根っこに近い所から変えられるのがリスニング用とは大違いで、心地良さより正直さの方がより必要だ。
ここで少々紛らわしいのが音響技師等との違いで、正直ったって何に対してかの内容が一寸違うのだ。
原則的にはどちらもありのままの確保が大前提なんだが、音響屋の方は聴こえては困るの・奏者は聴こえるべき音が主眼なのが正反対だ。
これを一層ややこしくしてるのが理想と現実の乖離で、先ずPA屋の実情から例示しよう。
理想的には雑音や邪魔者の排除が主務なんだが、近年の多くの現場ではそれよりタレントのメイクさんに近くなっちまってる。
何でってば当節「盛り」が全盛だからってのもあるやもだが、本来は会場や機器の制約と奏者の実力不足に依っている。
前者は営業を優先すれば当然の制約として、後者が実に面倒でいけない。
本来なら最低限のPAで奏者は意図した音をお客へ提供出来るべきが、常にPAの機器と人力を借りる癖が付き過ぎたとでも言うべきか。
悪い意味で助けて貰えるのが当り前になっちゃって、自力だけで足りるだけの事が出来ない連中のなんと増えた事か。
ジャンル的に不整合な声量不足の一流歌手!?なんてこの典型で、そんならせめて専用のPA機材位持参して自分で操作しやがれっての。
ホントはそんなの良くてせいぜい2流止まりなのに、お客さんの誰にもPAレスの歌声を聴けなくして誤魔化してるだけなんだけどねぇ。
はこの辺で引込めといて、要は音質改善にしても音響屋と奏者の分担がとても曖昧になってしまった。
そんな中で奏者に重要なありのままとはってば、「Micの手前迄」の音に対してである。
本来の分担からすると楽器や楽器Ampは奏者が、Micセッティング以降が音響屋の持ち分だ。
現実的にはかなり以前から奏者自身がオリジナルサウンド追及の為、自らMicセッティング等に乗出す事例もそこそこあった。(今回趣旨には不適切なので全てに携わったBeatles等は敢えて例に含めない事とする)
俺が思い出す筆頭はPhil CollinsやSimon Philipsだが、確かに彼等の独特なサウンドには音響機器の使い方の貢献度は高かったし抜きでは難しかったろう。
但し現代本邦の一部大馬鹿Drummerみたいに「出せて無い音を無理矢理捻り出す」のでは無く、自らの長所を補強してたに過ぎない。
前者の場合は他楽器に比べて著しく出音が短い太鼓の、音色を分り易くする為にBONZO等を参考に独特な残響を付加。
後者は発案当時の楽器より劣るMicの低域性能の補填みたいなもんで、どちらも楽器とその奏者の音色特徴に本人が一番詳しかったからであろう。
これには恐らくBeatlesみたいに技師がほぼ固定・専属じゃ無かった影響も考えられ、「得したい」ってよりゃそのせいで「損したくない」ってなもんとも言えなく無い。
これからすれば自らの音への理解が不十分な内に、俺言い「音質過剰演出ヘッドホン」を常用するのはとても危険な行為となるのだ。
要するに「盛り間違い」をし易くなる上、間違いに気付き難くなったり気付けなくなってっちまうとね。
この点で失礼乍ら取組み全体への本格度が低い方には勘違いしてるのが多く、奏者でもCD-900を使ったりするのは例えば録音が上手く行ってるかの判断等に使ってるのだ。(ちゃんと分ってる人限定ですが)
プレイの良し悪しより自分の振舞いのせいで、余計な雑音が出てそれが問題になる位拾えちゃってたりしてないかとかをよ。
例えばエレキGuitarの奏者だとストンプの踏み替えをしたりもあるが、音色がお気に入りのが骨董タイプのだとフットスイッチの音がかなりデカかったりその衝撃が内部回路に影響を及ぼしてたりとか。
これLiveとかフル編成時に平気でも、個別録りでは大丈夫とは限らんのよ。
或は生真面目な歌手さんが気持ちが入り過ぎて、ポップガードにぶつっかっちゃった気もするけど大丈夫かなあとか。
もっと言えば盛り上がって皆でジャンプしたりしててノリは最高になったけど、着地の振動にMicが反応し過ぎてて何じゃこりゃあになっちまってないかとか…。
俺とかみたいな兼業は例外としてプロでも音楽家なら、非専門の録音分野で予期せぬ粗相が無いかは気になっても当然ですねん。
<つづく>
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