音楽備忘録358 ヘッドホンと体格の関係Ⅲ
さて見落し易い問題点を例示した処で、そもそものタイプ別の得失に触れとかなきゃだ。
本項に沿った分類として取敢えずはオーバーイヤー・オンイヤー、当節大流行のインナーイヤーの3タイプで比較して行こう。
概知の方も多かろうが一応各名称の説明をしとくと、イン=Inなのでこれは中に突っ込むらしきが分り易いだろう。
若干紛らわしいのがオーバーとオンで、耳の外からと頭に乗る点では同じなんだよね。
この表現実はどっちも耳に対して限定になってて、オーバーは覆い被さる・オンは耳に乗ってると捉えての様だ。
つまりオンの方は希少例外以外の多数派は被っても耳全部が隠れない程度の大きさで、それより何より必ず耳自体に押圧が加わるのを意味している。
上記は一応世に出て来た順番にしたつもりだが、前者2つの時期差は明確では無い。
けれど小さく作るのにはその分技術が要る点と、能率を考慮すると大昔はオーバーイヤータイプしか困難そうな感じがするね。
先ずそんなに小さく出来ないからオンイヤー以上となるが、低能率や増幅器が貧相であれば遮音を良くしないとそもそも聴き取れなくなるからね。
それが技術の向上もあってどんどん小型化が進み、持運びや髪型等の阻害が無い等で今日の様相を呈している。
しかし一部趣味性でオールドスタイルを貫く者以外に対しても、声を大にして指摘しときたい点が俺からは山程ある。
必然性に従ってのインナーイヤータイプ選択にケチを付けるつもりは無いが、様々な面で音を優先するなら今の世情は褒められたものでは決して無いのだ。
一番根源的な理由は「人耳は耳穴の中で音を聴く構造にはなってない」で例え鼓膜の外側であっても、耳穴は耳全体より外で鳴ってる音を正確に聴ける様にする為の音響部品の一部だからだ。
Vocal Micの頭の丸い部分の一部でも手で覆う持ち方をする輩を我々PA屋は嫌がるが、丸い金網の部分は全部に通気性が保たれてて始めて所望の音響性能が得られる構造だからだ。
簡単に云やそんな持ち方されるとハウリングマージンが極端に低下するからで、これが声量の足りない見栄えだけしか考えて無い連中に多いから尚質が悪くていけねえ。
これも勿論困ったちゃんではあるが本項と比べたら実はまだ可愛いもんで、それは不具合が他人にも同じ様に分かるからだ。
ヘッドホンだとどんなに音が奇妙奇天烈変質してたとしても、本人以外にはそれが聴こえないから大変だ。
つまり使い方を一寸しくじっただけでも、もう裸の王様要請ギブスとなっちまうのよ。
特に近年は一般環境だと、印象面で演出の少ないスピーカから聴く機会が恐ろしく少なくなったもの。
先ずスピーカ聴取では音源との距離がヘッドホンより桁違いになり、しかしその方がまだ生楽器を生耳で聴くのには近い。
これに依って距離近過ぎが及ぼす現実とは異なって聴こえる現象からは相当開放されるが、より深刻度が増したと感じられるのが音色だ。
俺言い「印象面での演出」とは、例えば弱い音が強そうにになったりその逆になったりするのを指している。
鳴らした音の内「弱いヤツ」ってな環境が一寸でも悪化したり、音源から少しでも遠ざかったりしたら急に聴き取れなくなる様な類のだ。
自然環境下ではそんな存在感のグレーなのも、耳の直近から発せられれば間に敵が殆ど居ないんだから負ける姿が拝めなくなる。
言うなればこれはヘッドホン界でしか生きて行けない音ってなもんで、最低でも聴かれ方を指定でもしとかないとこっちの思惑通りにはならんって按配なのよ。
そりゃ楽器の生のを生耳でと例えば電子のをヘッドホンでなんて比べたら、元からかなり音は色々と違ってますよ。
でもね、音ってそもそも「空気の振動」って「自然界全面依存」の存在ですんでね。
その姿のありのままを知りたいなら、なるべく「生のを生」に近い形で聴いてみないと分からないんですって。
そんな体験が不充分なまま幾ら良い感じと思ったって、上述みたいな外敵に晒されたら通用しなくなりますねん。
他人と或は原形通りに聴こえてるかの判断は酷く困難で、余程膨大な体験を経ない限り僅かな保証も持てないずら。
<つづく>
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