音楽備忘録359 素人に可能な防音・遮音⑱
本項前回では石膏ボードの応援演説の様相を呈したが、極力そうしようとしたって木材ゼロで構築するのもほぼ不可能だ。
そこで今回は振動・共鳴の防止・軽減策へ進めて行くが、飽く迄事前策なのは忘れないどいて頂きたい。
金属よりゃ遥かにマシでも普通の殆どの木には繊維が含まれてるので、これの反応を皆無にするのは不可能だ。
物質性質的に共通部があるってのは仲間が大勢居るヤンキーみたいなもんで、誰か1人が敵を感知すると忽ち連絡が行って一斉に集まって来る様なもんなのだ。
この手のを音響的には物質固有共振等と呼んでるが、木で一番これを軽減してるのはパーティクルボードってヤツだ。
わざと一旦木をおが屑状態にしといて、後から接着剤と圧力で形成し直してある。
そんな手間を掛けるのが端材の活用(金儲け)が先か材の性質の為かはワシャ知らんが、薄い板状にすると繊維のあるのより強度は著しく低下する。
全体強度はかなりの分厚い塊でも狭い範囲だけの耐力は脆く、従ってスピーカの箱等で良く使われてるが素材剥き出しのは皆無だ。
これで誤認され易いのは響かないと思われがちな処で、多少響きはするが音に依っての差が殆ど出ないってだけである。
それでも差の少なさは癖を付けない利点があるので多用されてる訳だが、本用途では高密度から来る比重の重さも問題になりそうだ。
どうせ重くて脆いなら石膏ボードの方がもっと響かないからそっちを押してるんであって、絶対使えないって程じゃないがね。
それは兎も角木材はそのままでは必ず何等かの音に共鳴しちまうから、吸音材等がご登場となる。
本来の目的には吸音では無く「制振材」の方が適してて、鉛シート等がその代表だ。
当然の如く鉛シートにはそれなりの効果はあるが、これを採用するにしろしないにしろその前にどうすれば無振動に近付けるかは原理だけでも押えときたい。
その筆頭は何と言っても重いのが一番だが、重さだけで解決するには非常識に桁違いな重量が必要だ。
何処かの広大なお国だったらまだしも、どんな辺境へ行ったってそんなのより狭い日本では実現性はゼロに等しい。
そうなると最善策じゃなくても撹乱して誤魔化す方がまだマシな結果が得られるから、共振・共鳴周波数を多数に分散させてしまうのが次の目標となる。
この手の特定部に対する反応ってな、それが1点に集中する程大きく出るのが多い。
理想は反応を無効化したいけれどそうは行ってくれないから、性質を逆利用してピークを小さくしてやろうって作戦だ。
ここで防音・遮音の最大成果とは何ぞをおさらいしとくと、最終的には「一番洩れるのを許容範囲へ納める」事なのを再認識されたい。
それには限られた予算・重量・寸法の中では鉛シートの制振だけではどうにも足りず、鉛シートは壁板等自体の共鳴し過ぎ等を緩和する物とお考え下され。
因みに鉛シートだって隙間根絶に効果はあるけど、隙間をターゲットにするならビニール等の方がもっと適している。
それは接続部分の気密性の差が原因で、ビニールであればジップロックであれ熱で溶かしながら圧着させるのであれ色んな方法で比較的簡単に封鎖出来る。
なので楽器でそんな高音だけしか出ないのなんて無さそうだけど、もしそんなのだけが問題だったら園芸用の小さ目なビニールハウスにそれなりの加工を加えるだけでも充分かも知れない。
でも大抵は真っ先に低音の洩れが問題になってるから、上記みたいな特効薬が無いのだ。
そこで壁・天井・床等の板部分については概述の如く、強度は無視出来ないが「細切れの集合体」とする方が共振・共鳴のピークが表れ難くなるのでそうされている。
そうは言っても実質は他要素とのバランスを考えなきゃなんないから、全部をやたらと細切れにする訳にも行かない。
これ等「面を支え固定させる」には、メインの柱は分割しない方が圧倒的に有利だ。
因みにⅡで形を維持させるだけなら丈夫な面体だけの組合せだけでも足りたりもするが、その各面が全く撓らない→振動しない様にするのは是又非現実的な硬度が要求されてしまう。
面主体で考えたとしても所謂ツーバイフォー等が好例で、面=板には細くても柱は付いている。
制振を目的とした場合もどんな工法を選ぼうと撓りの完全排除は無理に近いが、一番撓った時でもたったこれだけを目指すと柱は多目の方が有利なのは上記と一緒だ。
プロの奏者は単純に完璧を目指すより多少の失敗があっても使える音になるのを目指してて、他分野に比べると必ずしも理想まっしぐらじゃ無いのは一寸異質かも知れない。
が本件みたいに理想が遠すぎる場合は、そんな考え方が身に付いてる人の方が成果を出し易いのを付記しとこう。
<つづく>
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