音楽備忘録201 リアルとバーチャルのせめぎ合い⑥
ここから具体的な演奏表現の差異に入ってくが、デジタル音源のリアル演奏ではデフォルトな鍵盤の場合から行こう。
体験からすると上手く加減するのは難しかったが、却ってモノフォニックのアナログシンセの方がこの点で配慮があった。
鍵盤楽器っつうと特に近年本邦では皆Pianoばかりを思い浮かべるだろうが、俺的にはそれは△だ。
弦楽器ではGuitarとViolinがある意味双璧なのと同様、鍵盤でも本来はPianoと大差ない位Organの存在は重要なのだ。
どちらも前者は素早い細かい音を出すのは得意だが、余韻が短いから音の長さに対する制約がある。
この点で後者は無制限であり、様々な音楽表現を実現するには両方の存在が不可欠なのだ。
毎度の大失礼表現をしちまうが個人的に日本でOrgan系が廃れ気味になったのは、Hammondよりエレクトーンが主流をなしたせいと感じている。
エレクトーンに楽器としては何らの瑕疵も無いんだが、音色が豊富過ぎる為に演奏力の比較がし難く編曲やサウドセレクトの方に耳目が向かってる様に感じられる。
是迄に様々な音色が世に放たれてるが例えば電子式のストリングスサウンドってば、結局は今でもあのSolina String Ensembleのそれが雛形なままだ。
つまり誰もが「聴き憶えのある音色」でいて「聴き憶えの無い表現」になってたりすると、こんなの初めて誰が弾いたのってなる寸法な訳だ。
これが原因か鍵盤以外の操作スキルが退化してる感じで、Pianoコンクールがお盛んな割にお上品なお嬢様方ですらダンパペダルの踏み方が随分乱暴な奴を多く見掛ける。
これが電子鍵盤の方にも及んだか、Organ奏法特有の表現手段の使えない楽器ばかりとなってしまった。
かつては鍵盤にタッチレスポンス機能が盛れなかったからOrgan式にしてただけかもだが、生Pianoでも上級者だとペダルは3本全部フルに使って当り前だ。
なのにMIDI鍵盤とかではダンパ以外は音色切替程度にしか使わん使えん仕様のが大手を振ってまかり通ってて、そんなこっちゃPianoにもOrganにも端っから敵いっこ無い。
とは言え今更何時も発振器の音を加工しただけみたいなアナログシンセサウンドじゃ、幾ら緻密な表現をした処で新味に乏しいのも確かではある。
けれども楽曲や編曲を尊守しようとすれば表現巾の足りないのは迷惑分子でしか無く、ひいては曲や編曲に余計な制限をもたらしてるのは明らかだろう。
それとも1つ気になるのが最近のキーボーディストの姿勢みたいな処で、空いてる足をもっと活用しようって意欲がどうにも見当たらないのが多い。
例えばエレキGuitarはGuitarなんだから基本「手だけ」で弾くものだが、ワウやボリウムペダルを自在に操りたくて「足の訓練」をするのは極当り前な作業だ。
これ物は考え様で手だけで弾けるからこそ好きなだけ足でオプションが追加出来る訳で、ドラムセットだと電子のでも普段から足は拘束されてるから僅かしか出来ないよね。
そんなんですからバーチャルよりリアルの方が美味しそうではあるけど、それ以外(音色)の部分で妙な差があたかも付けられてるのも大問題で御座居ますヨォ。
因みに独立したボリウムペダルを尤も必要とするのは恐らくペダルスティールで、ワウは「電気楽器用」であって元はGuitar専用では無いんでごんす。
以前触れた通りあのMarshall Ampも元々は「電気楽器とMic用」で、初期の頃にはOrgan用仕様のも極当然にラインナップされとりゃした。
売行きが悪けりゃディスコンになるのは仕方無いけど、売って無いから出来ないはアリでもやってみようともしないのは無しでゲスよ。
上記Marshallの件だって多分誰かが欲しいってぇから作ってみたんだろうから、「やってみたい」は元来は道具が出来上がるより先なんだと思うんだよねえ。
けれど今の電子楽器の技術レベルともなると音楽家のみの者に手に負えなくなって居り、発展性の余地位は最初から備えといて貰いたいもんだ。
何を置いても矛盾してると思うのは、音色がリアルに近付く程表現(演奏)もリアルに近付ける必要があるのにだ。
<つづく>
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