音楽備忘録146 分析耳的Hi-Fiオーディオ②
前回最後に意味としては聴き疲れし易いのは駄目って言ったが、それは音楽の「作られ方」に反してるからだ。
その鍵は1作品について「時間や量に限りがある」あり、結局は「再生回数の多さ」を目標に作られてるからなのだ。
文学作品だって良いのは何回読み返しても楽しめはするが、音楽との最大の相違は時間軸の自由選択にある。
これはスロー再生が一般的じゃなかった昔に他人の演奏をコピーしようとした時等に顕著となるが、元々がボヤケてたり難解だったりすると何度聴き返しても中々把握出来ないなんてのだ。
今なら専用アプリを持って来りゃそんな苦労はしないで済むが、昔だと他えスローが出来ても音程が変わってしまって新たな苦労が生じていた。
それが活字であれば、次の1文字を読むのは10分後なんてのもお茶の子済々だ。
けれど音楽は必ずしも1回聴いただけで全貌把握出来るのが良いでも無く、それではパトカーや救急車のサイレンなんかと同じになってしまう。
分かり難過ぎれば不親切なだけになるが、分かり易さだけにしちゃえば微妙な表現や様々な要素は盛込めなくなる。
また俺は昔一時期流行った「乍ら族」タイプの方で今風に言語変換すればマルチタスクが苦にならん方だが、従兄の本人談に依れば彼は一点集中の方が楽なんだそうだ。
そう云うタイプの人が真剣に聴こうとすれば例えば歌を聴こうとしてる最中は、他の音は一緒に聴ける様に入ってても頭の方で遮断されてる事だろう。
これ等の状況を総合すれば楽曲の主役は嫌でも聴こえて分かっちゃう位が良いが、脇役が目立ち過ぎれば邪魔になるだけと演劇の舞台等と同じなのだ。
故に汎用オーディオの理想はこれ等の条件が不変な限り、作品内で意図的に設定された目立ち具合を改変しないのがホントは必定なのだ。
それが現況の体たらくを迎えた原因として推察されるのは、平均再生音量が小さくなったからの様に思える。
それも本来全体を聴くのに適した音量より下げねばならんとなると、そのままでは小さく入ってるのは当然聴こえなくなるからね。
でもオーディオ側で幾ら明瞭度を高めたって周囲雑音の方が大ききゃ無効化するから、結局は一寸鬱陶しくてもヘッドホンなりカナルホンなりで発音体を耳へ近付けなきゃしゃーないんだわ。
それが今迄スピーカでは聴き取れなかったのが可能になったのが余程嬉しかったか、兎に角従前とは違う音に新鮮さと魅力を感じた人も多かったんだろう。
だが少なくとも俺みたいに仕事で微細音を扱う身にとって現潮流は殆ど拷問並で、単に楽しみたい時に迄ここにあそこに雑音が入ってると押付けられては休まらなくて困っちまう。
そうじゃ無い人で聴く時間も短い人だとそんなに気にならんだろうが、不要な疲労を強いられてる点では違いは無いのだ。
たまたま初めて入った飲食店でトイレ至近の席へ案内されたら普通不安になんないかい?、テスト前夜の最後の追い込み中だと普段平気な生活雑音だってそんな時に限って妙に気になったりしない?。
なので幾ら明瞭な音に魅力があっても脇役の音や不要雑音だったりするの迄全部が一遍に押し寄せて来るんじゃサービス過剰だ。
呆けっとしてたら聴こえてくるのは主役だけ、いざ細かい所迄聴こうとしたら聴ける程度のが最適なのだ。
それともう1つ追い打ちとなる案件があって、それはスピーカが兎に角やたらと小さく無きゃ駄目になった処だ。
楽器の方は電子化したりすれば最早実体を伴う必要すら無くなったが、空気を振動させるのが仕事のスピーカは原理に逆らった小型化には無理があるのだ。
今や一般大衆はとても体験し辛くなったので分り辛そうだが、同じ低音を出すのに足りないサイズで無理に出そうとすれば必ず明瞭度その他が大巾に劣化している。
つまり対昔比だとAmpとスピーカの頑張り度が逆転してて、昔は高能率高出力のAmpが作れなかったからスピーカが先頭に立って頑張っていた。
ピッチャーがヘボでも凄いキャッチャーがリードすればメッタ打ちは回避出来るみたいな感じだったのが、今はサイズ制約でスピーカが頑張り様が無くなったからAmpが剛速球で力でねじ伏せてるのである。
因みに上記低音云々は概述と思うが一応再出させとくと、具体的には明瞭度と音色の硬軟の関係性に相違が出る。
楽に鳴ってる方のは明瞭度と音色硬軟は殆ど無関係に設定可能だが、無理して鳴らしてる方のは正味の明瞭度不足を音色の硬さで誤魔化してるだけみたいな状態しか得られない。
現に宅の車で場所食われるのを嫌って最小・最安のサブウーハにしたら、ドスドスボコボコ低音が出るには出るが何の音やらサッパリなんて負の典型例がここにある。😢
「マトモなサブウーハ」の利点は置場所が自由になるがそれ自体は全然小さくはなって無く、小型メインスピーカと別に出来るだけだ。
しかし纏まった空間が狭室!?になる程確保し辛くなるから、存在意義が無くなりはしないって寸法だ。
<つづく>
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