音楽備忘録79 寿命 編曲耳!?編Ⅶ
前回は何時になく絶望感漂う終わり方になったが、対応策は幾らでもあるにはあるのだ。
只懸念されるのは現状ではそれへ踏み込むと、簡単気楽な打込みでは無くなってしまう処だ。
そもそもここ数回語ってる案件自体、編曲耳をまだお持ちでない方には何をそんな神経質な細かい事をと感じられてるやも知れない。
この際一度思いっ切り単純化するならば、簡単・難しいの「場所が」視点や立場に依って移動するって事なのだ。
って何だか余計ややこしくしちまった感満載だが慌てなさんな、要は編曲や演奏で難しいのと打込みで難しいのの場所がズレとるっちゅうこっちゃ。
とっとと具体例へ入るが例えばクレシェンド表現、これは先ずは音量を徐々に大きくしてくが本来はそれだけが全てでは無い。
最近のは電気・電子楽器でもその殆どに弾く強さ(物理的には速さだが…)で音量変化させる機能が付いてるが、古いシンセを筆頭にエレキギターでも設定音色に依っては音量変化が殆ど不能となってる場合が今でも幾らでもあるのだ。
これは深く歪ませてる場合で、そもそも歪みは最大音量じゃ無いと生成不可能だ。
そんな状態でしかし生ドラムと一緒にジャジャジャジャジャなんて平然と弾かれてるが、楽器の物理的最大音量はほぼ一定なのにどうやってであるよ。
それはこうやってって見えないけど、分かり易い音色変化等で代用してるんですわ。
んで「こうやって」ってのは例えば所謂ハンドミュートってヤツで、ブリッジの上へ手を乗せる或は押付けて弦振動をわざと邪魔するんだす。
こうすると普段はギンギンギラギラな音なのがポコポコになって、音色が籠る他音の伸びは短く音程感も普段より減るのでありんす。
そんでクレシェンドの場合はその手をを徐々に浮かすor脱力させてくと、それこそ徐々に普段の音色へ戻ってく訳だす。
ここでポイントとなるのはクレシェンドの長さや上がり方等で、人力の場合は欲しい音加減と手加減は基本的にリンクしとりぁーす。
なのでどんなのでも奏者の感性性能は響きますが、出来ないなんて事は絶対に起こらんので御座居ます。
それが打込み音源となるともし完全対応させるには、その強さのバージョン全部を網羅せねばなりませぬ。
これはもし達成させた処で例えば「エレキ1強弱123」と「エレキ1強弱124」 とかって、それこそ1音毎に音源を切替えるなんて恐ろしい手間になりまっせ。
処がそこ迄苦労しといても「あれっ次は125にしたつもりだったけど合ってるかな」って、見てなら確かめられるけど聴いて確かめるのなんて先ずもう無理ですからね。
だけど音の加減ってな最終的に打込みだろうと何だろうと耳頼みなんだから、耳で確認不能じゃ思った様に加減出来ないやね。
それでも何とかしたかったら残された手段は、例えば「読み」で補ってくとかになるんだわ。
これは野球のバッターなら反応が難しい変化量の大きい変化球を攻略する補助手段で、突然だと全く無理でも分かってれば少しは何とかってヤツですよ。
でもってその「読み」の当選確率を上げるには自分は本来打つだけで良いのに、投げる人や捕る人を観察研究しないと駄目と。
これが音楽でも全く同じで弾かなくても弾けなくても、「弾くならこうする」ってイメージが持てて無いとならんのよ。
それからするとまるで皮肉みたいだが、弾かない・弾けない人程よっぽど聴き込んで詳しくなれて無いとならんのです。
だって試奏してこの位かって加減を計るのが無理なんだから、「お試し不要、こんなのにはこんな加減でバッチリ」って知見として会得しとくっきゃ無いのよ。
因みに生楽器でもポピュラー系では録音で深コンプされると、クレシェンド時の音量変化巾はかなり抑制されている。
なので深歪ませエレキ程では無いにせよこれの表現は、音量変化から音色変化へ大分シフトしてるのを聴かされている。
打込みでは生のみたいなレベルオーバーの心配が無いからその点でコンプ不要だが、当節お流行りの音圧案件や小音量悪環境下聴取時の対応を考えるとコンプされる場合の方が多いかもだ。
それを想定して予めコンプが掛ってる音源もあるが、どちっかってぇとそれを使うのはお勧めし兼ねる。
それは上記の「音量変化を音色変化へシフト」を後から加減出来なくなるからで、第一印象で便利な物が後になってみると実は不便だったの一例だ。
決して禁忌事項と迄行かないけれどこの手の選択最適化の為にも、「生だったらどうしてたか」は打込むにしても結局必要だったのだ。
因みにⅡでわしゃ電子音楽しか演らんから関係無いはわってそこのアナタ、もし一般大衆に理解されたければそんなじゃアカンでぇ。
電子音のみのなんて長い歴史のある音楽では、物凄く最近にだけしか存在せんのですぜ。
そやから「音楽表現」は今でも基本的に生楽器由来のが主体で、音色が生から掛離れる程寧ろ必要だと思うんだがね。
<つづく>
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