音楽備忘録㊱ スプリングReverbⅡ
今だと音色・音質面からして伝統的なエレキサウンド以外ではあまり用いなくなったが、実は一応何にでもホントは掛けられるのだ。
今更推奨する程懐古趣味でもないんだが、何故調整パラメータが僅少なのに何にでも使えたかの部分を参考知識として披露したい。
ここで念の為現代のデジリバの設定に少し触れとくが、もし外見上調整箇所が少なくても実際にはかなり多くのパラメータがプログラムに依って内部では変更されている。
それどころかたった1つのデジタルシグナルプロセッサ(半導体LSI)は内部で七変化し、Reverb・Delay・Flanger…と正に変幻自在だ。
なので○○用と書かれてればそれ用の専用設定がプログラム切替毎に行われてて、もしデジリバだってその手の最適化を抜きにすると却って用途は極端に狭くなるもんなのだ。
何分微に入り細に入り合せられるので、それをしなけりゃ全て非最適となってしまう。
この点で幾ら今比じゃ貧相にしても何故デジタル化以前のは、大して最適化出来なくても使えてたのかが考察点だ。
その中でテープ式と残響室式(エコーチャンバー)は一寸例外的で、所望より低域だけ響き過ぎてしまう場合もあるので本件には対象外とする。
尤もこの2つも必ず残響音のクウォリティは原音より劣化するので、その点では原音と残響音の区別は付き易いが…。
ではスプリングReverbへ進めるがこれ等は一旦音声信号を電磁力に変換して金属製のバネを揺らし、その振動を電磁Pickup(基本的には電気楽器のと同一原理)で拾っている。
バネはその弾力性で一度外力が加わるとそれが止んでも暫くは揺れ続けるが、この「暫く」をエコーとして利用している。
俺なんかの世代には垂涎のプレートReverbも基本原理はバネのと一緒で、バネの部分が鉄板になっただけだ。
しかし只の板はバネみたいに長く震えちゃくれんから必要な残響時間を得るのには、かなり大きな板が要るしそれを振動させるのも大掛かりで大変だ。
故に一般用なんて全く無理で、俺には恐らく一生夢で終わるだろう。
ってこって実体験の無いプレート君には退場して貰って本題へ戻るが、スプリングReverbは低音を響かせるのが苦手だ。
そして瞬間的な音源を響かせるのも苦手で、これ等は実際にバネを揺する物理的な制約が原因だ。
依ってリニアじゃないし音響理論的には間違い無く欠点なんだが、実使用面では必ずしもそうでも無かったのが今なら良く分かる様になった。
ここで音楽に「掛けたいエコー」を確認してみるが、ドラマや芝居の効果音との違いの認識が大切だ。
音楽の場合は原音は極力明瞭で「弄られてない」無いのが必要で、それを活かす為にも通常は残響音の方が明瞭度が低いのが好ましい。
画像・映像で主人公と背景のピントが全く一緒だと見分け難くなるのと同じで、コントラストがあった方が聴き取りが楽になるからね。
では背景や残響はボケてて良いんだから何でも構わんかってばそうは行かず、不明瞭であっても微細なディテール迄完璧なのが望ましい。
ハッキリしなくて分り難いからって雑な事をすると、昔の低予算のアニメーションみたいに著しく状況感を損ねるからだ。
この部分だけに着目するとデジタル(バーチャル)は「実際に何かが響いた物」に対して脆弱で、以前述のデジタルオーディオとアナログレコードの相違点と同様なのだ。
現行PCM方式は正確で膨大な情報量を持つものの欠損部分も持っていて、運悪くそこに大事な要素があったら逃してしまっているのである。
それで正確で天文学的な量があっても生成された反響音は厳密には「非連続」で、その隙間があるせいでとても高音質でも残響にも「隙間」があるのだ。
これが皮肉な事に昔の低明瞭度・非リニアなオーディオだったらそれが攪拌されて隠れてくれたが、現代のレベルだと機械的一様感が増したりして何処となく滑らかさの不足が分っちまうとは。
<つづく>
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