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2019年6月13日 (木)

多重録音備忘録㊱ Clickの使用・不使用の結果差

初めに筆者の体験巾の広さの程度を知って頂きたく、改めて関係箇所を一寸羅列しておこう。

カセットデッキ×2を卒業して4トラオープンとは云えマトモな多重録音をやり出した頃、俺は既に音響は専門家・音楽でもセミプロになっていた。
しかし音楽の中ではパートに依ってはまだド素人のが残ってたので、コアな独り芝居じゃないがかなり両極を同時体験していたと思われるのだ。
なのでこれから記す体験例が、上級者・初心者向け情報のごちゃ混ぜとなりそうなのはお許し願いたい。

ではClickの使用の利点から行くが、誰でもすぐに気付くのはテンポ・リズムの安定化だろう。
どっこいちょっち狡いがそんなのより「録音では」
大きく影響するのがあって、それは編集に対しての相違だ。

過去名作にも類例が多々見られるんだが、Bandが盛り上がり過ぎて尺(曲長さ)が合わなくなるなんてのは良く起きる現象だ。
理屈ではレコード録音と分かってんだから尺を最優先すりゃ良さげにも思えるが、盛り上がり命の曲だとそれでは元気不足となってしまったりする場合も出て来る。

また作った・録った順番に依っては録る時点で曲毎の尺の割振りがまだ未定なんてのもザラだから、録ってから適宣切り抜いたりFade Outさせたり等となり易い。
当時のLPレコードは全体容量がCDより小さいだけじゃ無く、例えテープで出すにしても何れも表面・裏面に分割されるから1ブロックが更に短かったのもあろう。

例えば曲終りでアドリブ大会が始まったのだと、その頭の方と後ろの方では多くの場合テンポが少し位上がってても当然なのだ。
だが演ってる連中は楽しくても聴き手には全部とはならない事も多く、そんな時プロデューサ・ディレクタとしては不要部分を「中抜き」したりするのである。

すると結果的に作品のこの部分の途中で、気にすれば分かる位急にテンポが速まってしまったりするのだ。
今みたいに安定一定が当たり前のご時勢だったらよしてたかもだが、音楽の「魅力度」を最優先とした結果だったんだと思う。

俺自身は30過ぎに叩いて録ったドラムでこれを味わわざるを得ぬ状況を迎えたが、こっちは単にClickに合せる余裕すら無かっただけなのは何とも哀れな話しだ。
こう云う面では打込みやClick使用なら心配無用となるが、近年プロでClick使用が常套化したのは恐らく編集時の安全確保ではと思っている。

だがその結果大手の現場人は無能上司・経営者のせいかもだが、テンポ正確・音質綺麗・構成OK…なのになんで売れないのと勘違いしてそうだ。
市販ポピュラー音楽に求められるのは娯楽性であって、音楽教材に必要な正確性では無いんだよねぇえ。
だから面白く無きゃ他がどんなに良くたって、そんなの駄目に決まってんじゃんっての。

故にCM Song等みたいに商業性が著しく高い場合は仕方無いとしても、個性が大事となるアーティスト作品でそれをするのは単なる手法ミスなんですよ。
特に打込み物と同居無しで全部人が演奏するので、熱量や盛り上がり度が重視されるジャンルだったら尚更ですわ。

生だと下手なんて言われたくない気持ちも分かるけど、機械でしか演れない人が熱量や盛り上がりが欲しい時どう苦労してるかを考えてみるべきですよ。
恐ろしい手間を厭わなきゃ生のリズムの揺らぎ等をシミュレートするのも不可能じゃないけれど、弾けないんだから「自分固有の盛上り方」をそこに反映させるのは殆ど無理なんだよね。

確かに弾けなくたって鼻歌・手拍子なんかでテンポは出せるけど、それが楽器を弾いてる時と同じになる保証が無いし大抵は多分少し違って来るからね。
コアヲタとしてチャレンジするなら未だしも、どれだけウケるか不明な1曲だけにやたらと時間を掛けても構わんのかとなってしまう。

これ等からすると要は使い分けが肝でもし手弾きで打込みに勝ってる様に聴こえるのがあったとしても、実際に測定したら間違い無く正確さでは負けてるのを保障しますよ。
だが前述の通り数学的正確と音楽的正解にはズレのあるのがしょっちゅうなので、もし手弾きの方が良く感じられたならきっと音楽的に上回ってたのが原因だ。
キッチリ分析するとハッキリ答えが出るんだけど、普通音響屋じゃない人はそんなの試さなかったり適正に出来なかったりするから気付き難いかも知れないが。

因みに恐らく近年ポピュラー系では皆無なClick・所謂リズム楽器無しで、多重録音をしたらどうなるかの体験談をば。
俺は初期はカセットデッキ×2で録ってたと書いたが、それを始めた当初はリズムマシンをまだ持ってなかったの。
だから必然的に最初に録るパートは「ノーカウント」になったんだけど、昔だからかアホだからか全く何も気にしなかったし特に気にはならなかった。

それで各パートが寸分違わず揃ってたかってばノーだったけど、単に奏力不足やモニタ不適切等の方が原因となっていた。
太鼓より他の楽器が先に始まるのってのも昔からあるが、単にそれで最後迄行っちゃっただけって感じだったな。
その頃は兎に角曲が作れたのに浸って没頭してたから余り遭遇しなかったけど、Click無くて苦労するとしたら「始める時のテンポ」の方が影響があると思う。

俺は未実施なままだけど過去にプロの現場で叩く直前にClickをちょっとだけ聴いて、自分の感覚と実際のテンポのズレを修正してから始めるってのは訊いた事がある。
運転中に標識や信号をチラ見確認する様なもんで、青信号で走り出したらそんなのより飛び出しとか怖いから前を見る方が中心になるのと似た様なもんだ。

これは特に他の誰かと録る場合にはかなり大事みたいで、自分だけよりコンビでタイミングを取り合ったり組上げる方へ神経持ってけないと意味無くなるからね。
その時のメンバーが自分に対して悪い意味で頑なじゃ無かったなら、どっちの人も独りで演ったのとは少し違いが現われたりするもんだ。

それこそがコンビネーションがもたらした「化学変化」でロクに違いが出ない出せない様なら、組合せが不味いか合奏が分かって無いだけだ。
だったら弾く時具体的にどうなんのは、次回の講釈へ。

<続>

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