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2019年5月16日 (木)

多重録音備忘録①

そもそも今時「多重録音」なんて言い方が通用するのかって話しだが、一言で表せば奏者人数より沢山の音を録音する手段の1つだ。
今では誰でもPC等を使って1人でテンコ盛りにするのも当たり前だが、かつては弾く方も録る方も機材制約でそれはそれは大変だった。

今回の経緯は修理依頼も漸く一段落した従兄から、昨日は昨今の巷での作曲の仕方について訊いて少し驚いた件だ。
我々が一寸推してるGuitar少女が、「パソコン無いと作曲出来ない」と呟いたんだそうな。
彼女はPVでもLiveでも弾き乍ら歌ってたりしてるので、オジサンには理解し難い話しだった。

殆ど楽器を弾けないとか持ってなかったりしたなら機械が無けりゃ作れないし、マトモにゃ歌えんならボカロが無いと困るのは分かる。
けどどうせ生本番で弾き語りするなら最初からそれで演った方が手戻りも無くて済むし、歌物作曲の根源は「口から出まかせ」が第一段階なのは未来永劫不変な筈だ。

騒音問題や慣れなんかもあるにしても、「パソコン無いと作曲出来ない」ではちと可笑しなのだ。
その原因に録音手法も含まれてそうな気もしたので、ならば多重録音について色々振返ってみようって趣旨だ。
ここでは一般的なのよりも貧民素人でも可能な方法を主として、過去の実例や体験を含め綴るとしよう。

先ずは多重録音の簡単な歴史から行くがそのキッカケは、複数トラックを持ち個別再生・録音が出来るテープレコーダの出現辺りだろう。
一般的音楽商用録音の始まりはレコード盤へのダイレクトカッティングからだが、これはもし演奏等に失敗すれば刻んだ盤が無駄となるシステムだ。

しかもこれだと曲構成の編集等の後処理も一切不能なので、次にテープレコーダが主流となった。
今やこれも死語だろうがテープだと「切り貼り編集」が可能で、録った後に長過ぎたから歌の2番の部分だけ切り取るなんてのが可能になった。

それと並行して映画の音再生をフィルムのそれと自動的に同期させる目的で、レコーダに同期用のトラックが別に設けられる様になった。
この辺りからテープならレコードよりはトラック数増加が容易なのが浸透し、徐々にだがトラック数が増えて行った。

しかし記録媒体(テープ)の容量の都合で音質を気にすれば、アナログであったからトラック数の増加に応じテープ巾も広げる必要があった。
それで最終的に24トラック位迄拡張されたものの、機器もテープも高価となって誰にでも使える物とはならなかった。

因みにカセットテープでは元から狭巾で小容量なので頑張っても片面のみの8トラック位が限界で、専用オープンリールですら24位が実用限界だった。
それよりトラック数が欲しい場合はレコーダの複数同期使用が常套手段で、確かBeatlesのアルバムSgt. Pepper’sでは4トラック×3=9かなんかだったと思う。

4×3=12が
9 なのは各レコーダで同期用に1トラック取られてしまうからで、当時の彼等にしても使える8トラックはまだすぐには用意出来なかったみたいだ。
今と違ってトラック数に制約があったから「ピンポン録音」法を用いるのも当たり前で、録った数トラックのを仮ミックスして元より少ないトラックへ纏める方法だ。

或は録ったのとそれを聴き乍ら弾いたのを混ぜて一緒に別トラックへ録ったりするんだが、こうして新たな音の為の「空きトラック」を生み出して行くのだ。
但しこれをするとピンポン一回につきテープアナログ録音による劣化も漏れなく一回付いて来るから、単純計算でも普通の録音機の倍の性能は欲しい処だ。

現実にはそんなのは全く無理だったが、それ故最初から所望トラック数を満たして無い限り広巾テープも必須だったのだ。
後年補助的に雑音低減とアナログ式容量圧縮技術も開発されたが、それが今だとサラウンドの代名詞としてしか認識されぬDolbyだとかお目に掛らなくなったdbxシステムだ。

何れにしてもアナログだと容量増量は物理的増量に直結するので、柄も嵩むがそれ以上にコストが庶民にはとても耐え得る物では無かった。
俺の場合も頑張ったが8トラオープンで限界で、これはレコーダだけじゃなくMixer卓等の都合も含まれていた。
当時は極一部のEffectorを除き全てがアナログなので、録ったのを混ぜるのにもトラック数分のMixerチャンネル数が要ったからだ。

Beatlesなんかではその録音StudioがClassicオケのMic個別立て対応の所だったから、元から先に多チャンネル卓が備わっていた。
しかもデジタルと違って何らかの処理したのを再保存する際に必ず劣化が伴うので、単にチャンネル数のみならずEffectorやEQだってトラック数分用意されてるのが理想だった。

当時アナログ録音のみでは斯様に「一大プロジェクト」であったから特に庶民には妥協必須だったが、問題は何処を妥協するかで人それぞれだった。
とは言え多重録音をしたがる多くはその要因が音数(楽器数)等なので音質妥協を選択してたが、それだって数多くなったのを聴き取れる最低水準は必要だ。

その1:ラジカセ(モノラル)2台でピンポン多重
これは昔の仲間がやってた手法で彼自身の想い付きかどうかは未だ知らんが、昭和の当時としては最も敷居の低い誰でもすぐに試せるやり方だ。
最初に普通に録ったのを再生し乍ら新たに別のを弾き(歌い)乍らもう1台のラジカセで一緒に録る、要するにラジカセに分身になって貰って合奏する訳だ


先に録った分のはラジカセスピーカ再生なのでバランスとるのも大変な上音質劣化が凄いし、ラジカセ音量の限界から生太鼓みたいな爆音楽器には使えない。
音質無視にしても聴き取り限界が4回重ね程度だが、「何処にでもあり得る物だけ」で出来た処がアイデアもんだった。

今だったらこんなのは変なヲタ位にしか意味が無いだろうし、当時だってラジカセにステレオのも既に出ていた。
だがスピーカ再生→別機録音では分離度や毎回左右反転が起きる等更に問題続出で、それらの克服には次の手じゃないと厳しかった。

これはとてつもなく原始的だがそれ故他に録音機材は一切不要で、オーディオに無興味だったりしても音楽さえ出来れば即実行可能だった。
手持ちラジカセが1つだけだったとしてもモノラルので構わなきゃ、当時は何処にでもあったから借りて来るのだって大いに見込めた。

その2:ステレオテープデッキ2台でピンポン
その1からヒントを得た発展形で、従兄や俺なんかが多分同時期にやり出した方法だ。
こっちは音楽より先にオーディオ趣味を持ってた関係で、最初はテープダビング目的でもう1台のステレオカセットデッキが入用となっていた。

今以上に生活物価全体比ではレコードは高価でそれの保護や聴き場所限定解除の為にも、普段はテープに録ったので聴くのが当時は一般的だったと思う。
最近じゃレンタルビデオ屋すら潰れる始末だが当時はそんなだったから、レンタルレコード屋が全盛だった位だ。

従兄の場合は少し事情が違って「生録ブーム」ってのがあって、それ用にカセット「デンスケ」なるポータブルのとMic等も所持していた。
ラジカセも大抵電池駆動可能だったから内臓Micでだってやれなくは無かったが、録りたいのの音源に近付けない場合等はそれでは求めるのとは程遠いのしか収録出来ないからだ。

俺は最初は簡易Mixerすら持ってなかったが、操作自体は既にあちこちで弄り倒してたので習得済みだった。
最低限の知識と技術があると安いのでもどれなら使えるかすぐ分かるから、最低限なのを我慢すれば買うのもこしらえるのも比較的簡単だった。

俺の場合はかなり演奏初期の時点でGuitar・Bassの二刀流だったし歌っていたので、これを同時に聴いて貰うには多重録音しか他に手は無い。
鍵盤だとコードを押える程度が関の山だったが、当時安価なポータブルキーボードの出現でそれを買って活用した。
格安玩具電子鍵盤の音質なんてタカが知れてたがカセットのピンポンは劣化も中々なので、それを逆手に取った様なもんでそれなりに行けた。

従兄の場合は幸運にも自宅で昼間なら太鼓が叩ける環境下にあったが、録音するのに上記「その1」では目茶目茶に歪んで無理なのも大きな理由だっただろう。
その頃40年位前当時にドラムマシンはまだ産まれて無く、Dr.Beat等の簡単なパターン自作が可能なリズムボックスが徐々に浸透し出した程度の有様だった。

それでか叩ける人且つそれ(ドラムセット)を持ってる人の地位!?は今より格段に高く、「この曲を叩いてくれ」要望も多かった。
それも有名曲ならまだしも自作曲だったりすると太鼓の編曲とその譜面迄も作れないと、学友の吹部の人に頼むのなんかも無理だからねぇ。

片や何とかリズムボックスを入手出来ても今度は「機械の操作」が出来なきゃダメだしで、当時一般人の機械操縦レベルは今のスマホと黒電話の差に代表されるが如くであるからのぉ。
そんな調子だから録るのだってちっとも誰でもじゃ無かって、「出来る人が頼まれる」もんなのが当たり前だったけか。

本筋復帰するが兎に角この方法はそれなりに色々な演奏に対応出来たが、厳密にはそもそも太鼓音量で歪まないMicを持ってなかったりといい加減ってばその通りかもだった。
それでも音質の悪さを除けば市販のに近い感じの音楽状況を作り出す事は出来たし、そこから随分他方面に渡って体験したり学んだり出来たと感じている。

<つづく>

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