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2019年5月17日 (金)

多重録音備忘録②

当時だって俺等みたいな邪道なのじゃなく、所謂マルチトラックレコーダを使う素人も出始めては居た。
しかし40年位前となると外製は高価で問題外・国産のオープンリールで8トラックがやっと出るかどうか位で、4トラのでもカセットのは誕生前夜でそれもまた高根の花だった。

TEAC(TASCAM)からカセットで有名な144が出たのは数年後だったし、それだって対今比では随分と高価だった。
これは理屈的にはテープの使われ方は普通のステレオ「往復」録音のと同じで、通常裏面になる分の記録方向が逆になるだけだった。

少しでも記録容量を増す為に普通のの「倍速」になってたにも拘わらず正確な理由は不明だが、一般オーディオ用テープデッキより大分音質的に何故か劣っていたのだ。
なので重ねる回数がもし少なかったりすると、俺的には前回出「その2」方式の方が音質変化が少ない様にも感じられた。

それもあって俺等の内輪ではカセットマルチは中古が出回ってからか、俺は一気に中古4トラでもオープンリールのへ移行する事となった。
当時だって色んな奴等が居たけれど、新曲が出来る度に毎回外の専門スタジオに出費する者は少なかったと思う。

当時物価が違うのに楽器価格相場は今と大差無く、その上コンパクトエフェクタ1つとってもデジタルマルチのオールインワンなんてのは皆無なのだ。
そうなるとどんなにグレードを妥協しても最低必要額は今より要って、アマチュアミュージシャン等の多くにとって録音にまで予算を割く余裕なんて殆ど残って無かった。

そんなこんなで今との一番の違いはトラック数案件で、かつてはグループ系以上の音楽だと大抵はこれも前回出「ピンポン録音」の回避が難しかった。
今だと音響後処理を個別に施しても実質的に劣化を気にしないで済むし、Mixだってその辺に転がってるPC等
へ取り込みさえすれば体裁を整えるだけなら簡単だ。

なので大袈裟なMixer卓が無くてもPCもエフェクタもそれぞれ最低1個 、同時使用数分のMicプリさえあればかなり結構な音が録れてしまう。
録音機器の今昔の差を映像作品に例えるなら昔のは「全て実写」、今のはバーチャルやアニメも含め何でもアリだ。

所望トラック数確保が困難だからのピンポン録音だったが、劣化のあるアナログなればこそホントはトラック数は必要だったのだ。
実質トラック数無制限且つデジタルの今だとほぼ不要になったが、ピンポンしても劣化しないのは後生な矛盾だわな。

ここで「ピンポン録音」の実情に少し触れとくが、一番の懸案事項は後からのやり直しに大きな制約があった処だ。
部分Mixを既にしてしまった分は後からの個別変更を受け付けず、特に音域の近い物同士が入ってたら殆ど何も出来なくなる。

例えばリズムGuitarとBassだったりなら、Bassしか鳴ってない音域だけEQで持ち上げるなんて擬似バランス変更も少しは出来る。
それでもGuitarのReverbだけもっと増やすとかは無理で、ある意味「録る前の想像力」が仕上がりに直結と云える感じだ。

尤も録っても録らなくても生演奏なら未来永劫何時だって一発勝負なのだから、それからしたら大した問題でも無い筈だ。
もしそんな所で悩んでる方が居られたら、それは録音機に音楽が誤って支配されてると気付くのが宜しかろう。

今後AIがより発達して設計から配送まで全て機械化されたとしも、使うのが人だったらそこに「生」が残る。
AIのData収集迄完全自動化したとしても、その持って来たDataの発祥に大抵は人が絡んでる事だろうし。
機械と人・言い換えりゃ手段と方法をもし混同したりあべこべにしたりすりゃ、そら上手く行かなくったって当然ってだけのお話しなので御座居。

又戻って前回出「その2」基本ステレオテープデッキ×2方式の最大利点は、少なくとも録音機レベルでは一切専用品を要さない処だった。
それとこれも理由不詳だがマルチトラック機の使用可能テープが何故か首尾一貫して最高グレード非対応で、それは一般市販品ではカセット・オープンリール問わずそうだった。

デジタルオーディオ普及迄はアナログだって色んな向上策が講じられていて、テープにはノーマル・クロム・フェリクローム・メタルと最終的に4段階進化していた。
オーディオ用では当然最高グレードのメタルテープ対応が当たり前になったのに、音楽用は何時まで待ってもそれより2世代も前のクロム止まりだったのだ。

だから棚ぼた的だが重ねる回数が少なけりゃ、却って非専用使用の方が実際高音質になっていた。
SoloだろうとBandだろうと当時は今より何かと人海戦術で対応するのが常だったから、一回に複数人の同時演奏をするので重ね回数は多くても大抵は5~6回だった。

そもそも作品発表手段にWebが無かったんだかんら、最低限でもカセット・普通ならLiveでお披露目するのが至極当然だった。
故に生で弾き語りが出来んとしゃーないから、今みたいに録音でだけ演れれば良いなんて思ってる人は恐らく居なかっただろう。

この面で昔の一部ヲタ性の強いの(壮大なアンサンブルとか)を除くと、当時の多重録音は人手不足補填策の色合いが濃かったんだと思う。
40年前だってBeatlesからは10年は経ってたから、プロの現場ではボチボチ各パート個別録りもそろそろ始まっていただろう。

それでも今みたいに各自自宅や好みの場所で収録したのをネットで送ってなんてのには程遠く、手間的には面倒だったかもだが1度や2度は「顔合わせ」の機会があったのはその方が良かったかも知れない。
素人が勘違いし易いのは全く相手を知らないででもこなしてると思い込んでる処で、狭い業界で名の知れた同士だとキャリアがあれば何処かで既に顔合わせしたりしてるもんなのだ。

今では俺達も引退やら逝去等で仲間が減ったし、時流に乗ったかご多分に漏れず普段は完全な個別録り主体となっている。
この完全分離独立収録は失敗等不具合箇所だけのやり直しで済むのは結構だが、実際のアンサンブルを組立てるのが楽になるかと思ったら却って大変になった様な気がしている。

それはアイコンタクトに代表される「その場で息を合わせる」のが不可になったからで、録音時に同時に奏者映像も録っとけば何とかなる様な簡単なものではないのだ。
生対生の場合もし相手がこっちを見て無いor見られなさそうな様子であれば、別の合図方法を選ぶなり予め口頭伝達するなり策も講じられる。

そのせいか今従兄と製作中のでもクリックも使ってるのに、どうも昔より合わせ辛さを感じている。
俺が生まれて以来の長いコンビで散々色々やって来ててもなのだから、単に老化・劣化等だけが原因とは考え難い。
クリック使用に関しても過去俺は当然として、従兄も「叩けない環境下」で創る時はリズムボックスやドラムマシンは多用していたから慣れているのにだ。

どっちがより怪しいのかまだ不明だがちょいと思い起こしてみると、俺自身は普段自分だけだろうと他人含めてだろうと心の片隅に他パートの音の他演ってる姿も何となく浮かべ乍ら弾いてるみたいだ。
俺的には少なくともそう云う気分で演らないとグループ音楽っぽさが出ないからで、逆にSoloの集合体みたいにしたい時は良い意味でなるべく周りを無視するのを心掛けてたっぽい。

もしかしたらこの辺も近年本邦の技術的には向上してるのに、演奏力が低下した要因なのかと思った。
それを思うと現代のリズムや音程に関する人々の感覚は、音楽的には段々ピントがズレてってるのかも知れない。

<全然続きますから!?😓>

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