音創り㉕ 新しいサウンドって
自分自身も今丁度直面してる最中だが、齢のせいだか時代のせいだか新しい音に飢えている。
長く演ってると未体験サウンドが減って来るのもあるんだろうけど、それにしても最近は心踊らされる様な新楽器を見掛なくなったもんだ。
一時は老いや飽きかとも危惧したが、沈着冷静且つシビアに分析してみるとどうも違ったらしい。
コストや手間等の都合で仕方無い側面はあるが、安易なデジタル化一辺倒が結局は楽器業界自体を苦しめているとも考えられる。
近年のデジタル物の多くは「楽器自体としての音色」面ではほぼ進歩皆無で、それは向上させる場所ややり方を「楽器としては間違えている」からなのではないか。
美しい音の為には雑音や歪みが無いのが良いが、それは理科論的・科学的正解であっても音楽的・楽器的には必ずしも適応しない。
概述の如く未だブラスサウンドをどうするかで逡巡する日々だが、音色を取ればソフト音源優位もリアルタイム演奏を考えると躊躇してしまう。
ソフト音源だって最近ではレイテンシも改善されてるが基本原理的にゼロにはならないので、ノリの事を意識すると少なくとも最適手法では無い。
現況ソフト音源はまたその方式も非楽器的で、「遅れたりズレたりする危険性」が多過ぎると思う。
音源自体の発音時間分は生Pianoだって鍵盤の押し始めにはまだ鳴らないからイーブンとして、MIDIやUSBやPC内部での伝達時間が俺的には「お邪魔虫」なのだ。
打込みであればソフト(アプリ)等で逆算も可能なので平気だが、現代の汎用PCは「昔のよりすぐなんだからちょっと待ってて」思考一辺倒だ。
だが生演奏では「最初から完璧」なのよりあらゆるシチュエーションへの即応性が最優先で、故にPCでも簡単に出来るのにデジタル録音の専用機が未だ売られてるのだ。
それとシンセのデジタル化当初は「それ自体での新サウンド」をより出せる努力がされてたが、サンプリング音源を使う様になってからはそこが放置された空き家となってしまっている。
原理的に困難なのは重々承知だが、それだったらモンタージュ写真なんかの技術はどうなのよってさ。
要するに現行の音のの方は同じ姉さんの化粧のビフォーアフターだけで、その姉さんのせめて双子の弟位は何とか出来んのかいってな。
それでか今抱えてる私的課題のシンセBassの音色選択でも、デジタル元祖のYAMAHA DX-7のが候補に残っている。
今手元に自前のの他に従兄からこれとV50も借用中だし修理完了した従兄のKORG MS-20もあるが、新しいの程確かに「鳴らしてない時の雑音」は少なくなっている。
だがフィルタの特性が非楽器向きだからか自前デジタルのとV50は、余計な電子音が漏れ混ざっていて音色がギスギスしてて取って付けた感があって使い辛い。
フィルタ周辺部に限るとMS-20は抜きん出てるが、本件にはデジタル的冷徹さ等も欲しいのであからさまにノイジーでもDX-7かなとなっている。
尤も生楽器(Mic使用時)やハイゲインの電気楽器も入るならそれ等とは同等以下なので、ある意味殆ど生演奏だけの時代の設計なのが却って功を奏してるみたいだ。
他にもホイール若しくはジョイスティック等に懸念があり、正確性に優れてても「段階の間」が実に不作法で困る。
それは特に掛りを深くした時1/4音程だけ変化させたいとかを受付無い処で、それなら付けとく意味が著しく低下するってもんだ。
モジュレーションには未だしも普通の鍵盤楽器じゃ出せない「各鍵の間」が出せるのがミソなんだから、そこに制限が掛る様では「おめぇさん本当に分かってんのかぃ」である。
電子機器としてと楽器では高度と言っても場所も尺度も異なる点が多々あるが、昔のアナログシンセより風貌は楽器っぽくなったが中身は逆方向へ行っちまったらしい。
迷いは尽きぬがそうなると取敢えずデジタル生楽器のは後回しにして、電子楽器より手前のの範囲でこねくり回そうかとなる。
その中で余りに不適な環境しか得られなかったら別として、昔より格段に聴こえたまま収録が可能になったのに着目されたしなのだ。
現状弄られるのが苦手なデジタルを逆手に取ればそこで、人にも依るけど昔より「録る前に弄れる範囲」も広がってる筈なのよ。
その一例が最近記した様な「過度に明瞭度を気にする必要の消滅」で、昔で素人や無名だったら絶対不可能だった方法だ。
この数年期せずして望みもしてなかったClassic系にも触れて来たが、彼等の場合だと例え録音で低下があっても生最優先にしないとどうにも成立しないのを目の当たりにした。
俺がRockと出逢った頃はそれはまだ若い成長期のジャンルだったが、あれからン十年もすりゃもうとっくに古いジャンルになってるだろう。
なので本当に新しい音を目指すならRockやJ-POPみたいに年季の入っちゃったのはもう「終わって」て、新ジャンルを開拓しなきゃ無理ってもんだす。
では従前からあるジャンルでの残された道を考えるとするなら、収音方法や楽器自体の設定辺りでは無いかと思っている。
録音での手法の多くが未だ俺言い「逆算補填」に基づくもの主体で、ほぼそのままが保存可能になった今では不要部分が多く含まれている。
なのにそれが継続されてる理由を強いて挙げれば俺的には生演奏力の低下だと考えていて、Off Micでも明瞭度が足りる様になったのにそれに耐え得る演奏の方が疎かにではないだろうか。
音楽にとってデジタル化の利点は利便性等もあるが、俺的には録音しても音の変化が僅少になったのが嚆矢と感じた。
昔のアナログでも時には幸運な偶然で、生耳で今一だったのが結構行けるのになる事もあるにはあった。
だが幾ら必死に「逆算」しといても機械の安定度に限りがあったから、当たる迄買い続ける宝くじ状態迄もってけたら上出来だった。
各方面に様々な事情もお有りの様なので敢えて観念論へ向かうが、少なくとも基本的な発想位はもっと皆に持って貰いたい。
若い人には分り難そうだがある程度誰でも体験出来るので、鉄道の乗り心地で体験的に例示してみよう。
その1は今は殆ど無くなったブルートレインを筆頭とする寝台列車で、それにも機関車・客車両方に新旧があった。
普通に考えりゃ新しいのの方が何でも良い筈だが、特に心理的乗り心地の点では新しくなる程とても酷く劣化していた。
物理的な面では新しい方が寝床が広くなったりと色々改善されてたが、実際良く眠れたのは古い方だった。
強力になった新型機関車では発車時の衝撃がとても大きくなってて、ショック軽減が機関士の腕頼みになり且つその機関士も機関車列車の本数減少で腕が低下と正に国鉄末期症状だった。
古い機関車は少し非力でも旅客専用設計なので大きな衝撃等皆無で、起きてる時ならまだしも寝てる時の「ドォン」は目が覚めざるを得なかった。
客車も新しい方が広さ以外に騒音だって小さくなってた筈だが、重くなったせいで上記の衝撃に加担した他に「騒音の音色」がとても気になった。
古い客車のはそれがリズミカルで軽やかだったのが、新しいのは重く鈍く不気味な感じだったので寝付き難くなってしまったのだ。
どんなに改良しても列車は走れば必ず揺れるし音も出るもんだが、その「欠点」をどう処理するかに大きな違いがあったのだ。
理屈では旧来のは技術の未熟を味付で誤魔化したとも取れるが、寝台客に必要なのは眠れるかどうかで技術なんて知ったこっちゃ無いのである。
言っちゃえば広さが分かるのは起きてる時だけで、転落の心配等さえなけりゃ眠れる限りで狭くたって構わない。
コンピュータシミュレーションが進むのは良いけれど、体感実験しないと分からん部分が無くなっては居ない。
その2は特にカーブで揺れが少なくなる連接式を止めてしまった小田急ロマンスカーで、小田原と箱根湯本の間の乗り心地が大いに劣化した件だ。
その部分では単線なので行き違いをさせる為のキツいポイントが沢山あるままなのに、経済効率一辺倒でオーバーハングのある普通の連結車にしちまったからだ。
この場合のオーバーハングとは台車(車輪)より外側に車体がある事で、例えば台車が2横移動した場合それが3とかに車体の移動量が増えてしまう。
単線行き違いのポイント通過では右に曲がってから左或はその逆と短時間に両方向へ曲がる事になるので、実際には上記比率の倍も横移動しているのだ。
鉄道の乗り心地向上も昔はバネを金属から空気に換えて良くなってたが、その昔小田急が連接式を考案採用したのは空気バネ実用化前夜だった 。
今のは幾ら最新の制振システム付けましたっても「レールの位置より振り回される連結式」なんて、原理的に不利な方法では何時まで経っても横へ振られる距離を縮められないだけどねぇ。
在り来りの通勤電車のイスもバネが金属から樹脂系のへ変ったが、折角材料の適性が上がったのに具体的な座り心地の試験を端折ったか「心地」としては悪化の一方から抜け出せていない。
本邦或は世界的に古い資本主義主導だとどちらさんも似た様なもんか知らんが、やはり実用での世界に於いては考え方を間違えてるとしか言い様が無い。
研究所の人達なら欠点を無くす努力で大いに結構だが、商品開発の場面ではそれより実用性に注力せにゃアカンがな。
この問題が響きそうなのが音楽とか必ずしも理屈通りにゃ行かない類ので、そもそもが「気持ち的にどうか」で評価されるからだ。
嫌味な表現だが道具製作側は大抵は営利企業だし使用者のせいに出来る抜け道があるので、例え道具のせいが大半でも結果に対しては使用者のせいと世間は認知しそうだ。
鶏が先か卵が先かみたいな話しになって来たが、親子丼か玉子丼かの問題の筈なのよ!?。
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