音創り㉑ Ampのマイキング 余談編
今回は少しヲタ度高目だが、Fender Bassmanの録音業務用旧標準としての衰勢等を探って行こう。
当時でも他にAmpeg SVTもそれに次ぎそうな存在だったが本邦でそうなったのは近年になってからで、本国でもずっと使われてはいるが割合がそんなに高くない様だ。
それよりAmpegの場合時期が少し遡るがDonald ”duck” Dunnの使用等で有名な、B-15S等の方が録音現場では多用されてた模様だ。
これはその名の通りスピーカが15inchでバスレフ式と、当時としては最小サイズで重低音って感じだ。
尤も強力なのでも出力は60W止まりだしバスレフなのでOn Mic1本録りは不向きだが、前々回「音創り⑲」に掲載した初期Beatlesの様な録り方がデフォな時代だったので問題にならなかったんだろう。
Bassmanもこれ以前のはスピーカ方式等が大きく違っていて、頻繁に用いられるも用途がGuitar用が殆どだったらしい。
汎用面からは大きさと重量は大問題だがそれならSVTこそ先に消えそうなもんだが、ここでは敢えてそれを無視して続けてみよう。
Ampは俺言い「楽器の半身」なので最後は音最優先になるが、Bassmanのスピーカは12inch×4の集中型だったのが功罪両方に影響したと思える。
実は大昔だってBass帯域には15inchの方が適してるのは概知だったが、製作上の問題か耐久性の低い物しか無かった様だ。
加えて駆動が真空管では今みたいに自由にパワーアップ出来ないので、スピーカたる物は能率優先度が今より格段に高かった。
高能率一点追及するとどうなるかってぇと、その分低域再生には巨大な箱を必要とする様になってしまう。
Bassmanよりスピーカ口径が8cm大きいDual Showman Reverb Bassでは代りに数を半減させたってのに、奥行以外箱の大きさは大差無く尚且つ後者はバスレフにして容積を節約している。
近年の小型スピーカ+電気代ではエコに反する大飯喰Ampってのは、スピーカもハコも小さくして能率がかなり低下するのを補う戦法だ。
更にその電気代を少しでもケチりたいのもあって、デジタル増幅段も浸透しつつある。
尤もフル装備だと軽自動車でも思った程の低燃費にならんのと同じで、車でもAmpでも入れ物以外に仕事量には大差が無いのを考えりゃ当然の結果かもだ。
またこれは原理的由来なので今でも傾向は不変だが、スピーカは大口径になる程反応は鈍くなってしまう物だ。
それ故今でも口径30cmのツィータなんて存在せず、例え無理に作った処で誰も買えない値段とかになりそうだ。
それでBassmanでもSVTでも敢えて理想よりは口径は我慢して、アメリカだからかお得意の物量作戦に出た訳だ。
当時としてはBassmanの方が美しい妥協点を見出していたが、徹底度ではAmpegに軍配が上がる。
何せSVTでは非力で低音に不利な10inchスピーカとは云え、一箱8個×2で都合合計16個とホントに桁が違った。
単純計算すればSVTにはBassmanの4倍あるから、ユニット単体能率が1/4でもトータル能率では間に合ってしまう。
能率を気にしなくて良ければその分を再生帯域拡張等へ回せる訳で、逆にBassmanのは4個しかなく大きくても口径が理想に8cm足りない分ユニットの条件が厳しくなっていた。
ローエンドだって好みに依るとは云え少なくとも余裕はゼロで、そっちへもリソースを与えたいなら8個は欲しい処だ。
しかし太さやまとまりではBass用かGuitar用かを問わず12inch×4ってのの良さもあり、今でも無くなってはいない。
それと同じ爆音を出すなら最小数・サイズより余裕のある方が音色は伸びやかで硬くなり過ぎないものなので、運搬不要で金持ちだったら小ささへお金を払うのは無駄ってもんだ。
処で「Dual Showman Reverb Bass」をネットで調べたら出て来なく、出るのは「Dual Showman ReverbでBassを鳴らす」ばかりだった。
高校時代に近所で入り浸ってた町田の楽器屋で貰ったカタログに載ってて知り、珍しいけど俺の中では誰でも知ってるとずっと思ってたんだが時の悪戯なのか。
未確認の使用例だがもし「特殊な使い方」をしてなければ、TVドラマ「傷だらけの天使」のOPのBass辺りが可能性が高い。
Bass AmpでVibrato内臓のなんて他に覚えが無いんだよねぇーで、今回は俺的禁を破って証拠画像を載せる事にした。
Fenderのは普通Guitar用とBass用ではヘッドの一部が別回路になってるが、これに限ってはどうか不明だ。
しかしMarshall系等より元から低音を盛大に盛れるトーン設定になってるので、受け手(スピーカ)が対応してればそのままでも行けそうだ。
これも体験的に正規Bass Amp入手迄手持ちBandmaster Reverbで代用してたが、宅に来た殆どの人はガタイが大きいのも手伝ってBass Ampだと思い込んでた位だ。
また昔のHIWATT何ぞは最初からGuitar・Bassの区別が無く、そんな芸当も可能となるのは大型業務用Ampの特権だろう。
何れにしても現代ではLine録りの普及が先か運搬の都合が先か分からないが、Bassのスピーカ録りは昔より条件が厳しくなったと感じている。
録音とLiveで同じAmpが使えないケースは昔からあったが、最後にその例を1つ掲載しとこう。
全盛期のDeep PurpleのRitchie Blackmoreの音色の話しだが、レコードでは美しいのがLiveのだとどうも今一なのが不思議だった。
それが第2期当初のだとLiveでも美しかったが、かなり後で知った原因は「美しい=使用AmpがVOX AC30」だったからであった。
それでも中々「Ampが違ってた」のに気付けなかったのは、「音色の系統は一緒」だったからだと勝手に言い訳にしている。
後にBrian Mayが実施に踏み切った「並列使用」を除けば、当時は他に選択肢が無かったのだ。
軟らか目に充分歪ませられた上必要な爆音が得られるのが当時はMarshallオンリーで、今だったらBoogieのDual若しくはTriple Rectifire辺りも候補になったかも知れない。
因みに整流管式で出力100Wを超えたのは上記のRectifireがお初で、整流管は歪ませ時の音色に有利でもパワーを限界迄絞り出させるのは不得意だからだ。
そんな今更で中古で偶然手にした整流管式(前出Bandmaster~)だが、俺的には歪ませてもうるさくならないのの源なので…。
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