音創り⑱ AmpのマイキングⅠ
さて今回はOn Micを前提に話を進めるが、Offの場合は例えばBand全体練習のメモ録りなんかが似た様な状況なのででゲス。
更に電気楽器のAmpでも小出力のは対象外としますけど、これもMicの耐入力音圧等の心配が無いので。
生楽器と比べたら簡単なので入門者が最初に取組むのにお勧めだが、最近はBassスピーカキャビネットに関してはかなり難しくなってしまった。
現況本邦のJ-POPサウンドの傾向からすればBassはおろかGuitarにしても、小奇麗さ優先なら過去にはあり得なかった超絶デジタルエフェクタでエレキ系は皆Line録りの方が無難なのだろう。
Butどうせ「音の規格化」を極度に求めるんなら人力なんかとても打込みにゃ太刀打ち出来ねんだから、例えばゴールデンボンバーの発展形みたいな感じで映像では生演奏・録音では打込みでももうええんでないのって思ったりして。
それでもどんどんニッチになってっても電気楽器の生演奏がこの世から消え去りはしないと思うので、打込めなかった時代からの経験は記録でもしときますかってね。
なんて何時にも増して悲観的なのはより一層の貧困からかもだがそれはさて置き、先ずはエレキGuitarでもAmp(スピーカ)録りじゃないと厳しそうなのを例示しとこう。
これの際たるのが宅の休養中のギタリストが執着してる「フィードバック奏法」で、確かに最近ではエフェクタでも真似事ならかなり出来る様になって来た。
理屈だけで考えれば親切エフェクタ利用の方が安定度抜群で弾き易いんだが、それだと単なる音色のバリエーションだけとなる。
今時ニーズがどれだけ残ってるか知らんけど、実はフィードバック奏法の最大の魅力は「不安定」にあるのだ。
弾く方としちゃ上手くフィードバックしなくてハウリングになったりして面倒だけど、先が読めないハラハラドキドキ
・かなり再現性が低いのが却って独特な魅力なのだ。
何処迄実音が伸びて何時から倍音メインに変身してそれからハウリングに…、言わば季節物だとかの類である。
それとフィードバックの「させ方」には大別すると2種類あって、Gain(感度)を極度に高めるのと単純に非常識な爆音にするのとがある。
両者の違いは歪みの深さで近年は体験者が僅少化したと思うが、ちっとも歪ませて無くたってフルアコで爆音にしようとしたら簡単に起きたりもするもんなのだ。
ある意味非科学的且つ耳の健康に危険だが、極力歪ませずにソリッドボディのエレキでもフィードバックさせたかったら後者の方法しか選択肢が無い。
ニーズは不明だし大してありそうじゃないけれど、昔を知ってる俺みたいなのには「大して歪んで無いのにフィードバックしてる」とどえらい爆音で演ってんだスゲーなんてすぐイメージしちゃう。
BeatlesのI Feel Fineのイントロのブンっん・んニョォオ~が好例で、当時としては他に類が無かった高出力AmpとGuitarがセミアコで共鳴し易かったのが成立条件だった。
因みに「ニョォオ~」の最後が少し歪んだ様に聴こえるかもだが、あれは歪みよりも弦が大きく共振してフレットに当たった音で御座居。
前からここではほざいてるが極端安定指向で何時も同じで良いならこんなハイテク時代に、もう今更毎回新たに弾くのなんて非効率でしかない。
同じコードで同じ刻みを生身の体で繰り返す等の意義は、極僅かでも変化があったりしてそのお陰で飽きずに済むからだ。
個人的にカラオケへの興味は薄いけれど、だからって生演奏よりカラオケが劣る等とは決して思っていない。
その人が楽しめるなら形は無関係で、出来れば誰かと共有・共感も出来たならそれで充分だ。
俺も打込みだってとっくに出来る様になれてるのに何故いい齢してまだ飽きずに弾いてるかってば、その場の気分で微調整するのが生の方が楽だとかがあるからだ。
奏者を限定しない或は出来ない前提での作曲家視点では演奏力への依存を排除しようと、フレーズや組合せだけでも成立するのを目指したりする。
ある意味現況でのこれの典型例がボカロだとかだと思うんだが、それでも構わんならリスク低下の為に演奏なんて面倒仕事からは撤退すべきじゃないの。
そんな選択肢があるのに今時わざわざ弾くんなら聴き取れるだけの安定性は要るけれど、そんなのより「人間味」とかその時の「場の雰囲気」なんかへ拘るのが重要だと思う。
それにはなるべく「自動」を避け「手動」で演るのが得策で、Guitarの歪み1つとってもエフェクタよりAmp優先とした方が良いし差別化も図れるってもんだ。
簡単に比喩すればデジタルお便利自動タイプのエフェクタのはドラムマシンで、不便な手動エフェクタだと生ドラムみたいな程度は違うけど傾向があるのは確かだ。
この俺言い「お便利自動」も「1段階のみ」ならまだ何とかなるが、弾くの以外の全段階がなんてなれば累積して行くからかなり機械チックになっちまうよ。
生演奏録音で今と昔が大違いなのの代表は後処理の次元と記録精度で、昔と比べたら本当に後から幾らでもどうとでも出来る様になったよなぁ。
故に収録時に必要なのは唯1つで「出た音は兎に角全部拾っとく」のがコツなのではと感じていて、もし録った後で「無い物を合成」しようとするとそれは正に機械の音だから。
年の功!?でこれを分かってるつもりでも旨く行かせ難くなったのがBass Ampで、筆頭原因はスピーカキャビネットの方式の変遷がそれだ。
今へ近づくに従って録音可能周波数帯域が拡がって可聴帯域へ迫って来たが、それに伴いバスレフがより主流化したし帯域分割(例えば高音と低音を別のスピーカで出す2Way)して「1ヵ所から全部」は出て来なくなってしまった。
Line録りよりAmp録りが主流だった時代はFender Bassmanが主流だったが、俺的にはその最たる理由はスピーカキャビネットが密閉型だったからだと思っている。
Bassmanもそれより昔はBass用なのに後面開放型だったが、何れも使用ユニットはフルレンジで「スピーカの前側」なら基本的に「出せるのは全部出てる方式」だ。
無論スピーカユニットのどの辺(縁の方か真ん中か等)を狙うかで音は変わるが、それはフロントロードホーン等以外のキャビネット方式ならどれでも同じだ。
けれどもスピーカ前面から一応全部出ててくれたら、所望の低域と中高域のバランスに依って位置を調整するだけで事足りる。
処が2Wayは「出口2つ」だから当然としてバスレフはスピーカユニットがたった1つでも、低域とそれ以外の出処が違って主に低域はダクト・それ以外はスピーカからと出来る場所が別れている。
また2Wayだってオーディオ用ならまだしも楽器用やPA用のは通常「聴く距離がオーディオより遠い設計」なので、指向性が鋭くなってるのでOn Mic1本で全体を捉えるのは困難なのだ。
バスレフダクトとスピーカが近目のだったら苦労すれば同時に拾えるポイントも見つかるかもだが、それでも大抵は別の部分に周波数特性の山谷が出現し変な癖が付いたりする。
Line録り全盛の今わざとMic録りにするならそんなに明瞭度は要求されんだろうが、だからって周囲雑音等を考えれば近いに越した事ぁないしね。
それでもバスドラ同様Micを2本にでもすりゃ済む話しだが、バスドラとBassの音の質の違いでBassの方が大変になるのだ。
バスドラなら元からアタックと余韻等の持続系部は音色が違うが、Bassの場合は連続・連結しているのである。
これを比喩すればバスドラは機関車と客車・Bassは電車って感じで、機関車と客車なら形が違っても平気だが電車は1両でも違う形のが混じってると編成美がとたんに崩れて撮り鉄君達には「ガラクタ編成」と呼ばれてる醜い状態となってしまう。
どんなに鉄分希薄な人だって新幹線列車の途中に貨車が入ってたりすれば大笑いするだろうで、「1つだったのを分けて又元通りに戻す」のは案外難しいもんなのだ。
人耳でそれが大して問題にならんのは「間にある空気のお陰」で、Off Micで構わないんだったらどうってこたぁない。
だがOffだと音域が低いだけにハコの残響の影響も格段に大きく、音の長さがバスドラより長いから部屋の物が揺さぶられて出す雑音なんかもどんな僅かでも「長く出る」から無視不可になる。
最後にBassのLine録りとスピーカ録りの長短等を列挙しとこう。
1.Line
雑音・帯域の広さ・リニアリティ等では有利で、多弦Bassの低い方なんかだとAmpの選択肢が少なかったり役不足となる場合も。
気にして無い人が実に多いので危惧されるのが音色調整の問題で、楽器内臓のPre Amp程度では無いよりマシだが不充分だ。
電気楽器の音色の半分は本来Ampで作られる物なので、楽器側の選択だけでは「自分の音」にはならない。
2.スピーカ
元が「そう云う仕様」なだけに「らしい低音」が得易く、シンセベースや打込みのとの差別化が図り易い。
尤も近年本邦では、どんどん困難化しつつある様だ。
俺自身もLineでも録れる物に回せる予算は無いって感じで、スピーカ録りで満足出来るAmpは未所持のままだ。
空間的にも理想が18inch(46cm)のスピーカなので殆ど可能性すら無いが、不幸中の幸いは自らが音響技師でもあった処だ。
道具的には電気楽器用の真空管式Pre Ampを自作・常用したりもしてるが、それ以上に録音の「どの段階でも」意図した方向へブレ無しで持って行けるのがお慰みだ。
なので奏者オンリーの人が自分の音を維持したければシンセ等と同様に、録音機や録音Mixerへ「入る前」迄に音色を完成させとくのがホントはお約束だろう。
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