音創り⑭ 忘れられがちなMicの性質 編
今回のお題は「Micの近接効果」についてで、昔より音源に「近接収録」が顕在化してるからもっと取上げられてもおかしくない処だ。
それが色んな面で「専用化」が進んだせいか疎かにされてる様だが、本来は根源的に無視出来ない性質なのだ。
その中でも俺が問題視してるのは「具体的な度合い」で、知識を持つものは多くても近年ではメーカからの発表が乏しいのが惜しまれる。
それってのもこんなデジタル時代になっても「音」自体はアナログのままで、その収録だって入口部分はアナログのままで現況デジタル化が不可能だからだ。
そして「音への影響」は「入口に近い」程大きいので、どんなに後処理技術が向上したって「最初が肝心」なのは不動なのだ。
だから次善策として少なくともメーカ想定の「使用距離」位は知っといた方がお得で、特性計測が素人に困難な以上はこの辺りが登竜門かもだ。
今回スポットを当てるのはその中でも距離に依って低域感度が変化する部分で、近年は公表が稀となってしまった実例の図をご覧頂こう。
本来なら代表機種は網羅しときたい処だが探した限りでは見当たらなく、それでも具体例皆無よりはマシって事で。
上図は近年では先ず使われなさそうな主にボーカル用の某ダイナミック型のものだが、縦軸が感度で横軸が周波数(単位[Hz])のグラフだ。
俺的読みをすると10cmなら大体低・高音のバランスが同等になるが、1mも離れたら低音の拾いが減りますからねと訴えてる様に思える。
1m時も200~1500Hzの間はほぼ水平直線で一見フラットだが、2000~12000Hzの高域「盛り上がり」に均衡させるには10cmで得られる盛り上がりが低域にも必要だからだ。
それはさて置き1000(1k)Hz以上では線が完全に重なってて、距離に依る感度変化が起きないのが示されている。
でもMicの位置次第で高域にも変化出るじゃんの貴方、それは距離じゃなく向きの影響ですと答えとこう。
近年使われるMicの大多数は「単一指向性」が持たされていて、狙ってない「Micを向けて無い」方向の音をなるべく拾わない様にわざとしてある。
これは大昔と違ってMicの複数同時使用が当たり前になったからで、逆に太古のたった1本だけでだったら無指向性じゃないと「拾い漏れ」が起きて困っただろう。
体験的にも’60年代のテープレコーダ付属のとか初期のラジカセ内臓Micの多くは、庶民のMic扱い不慣れとモノラルだったせいか無指向性だった。
実は無指向性の方が周波数特性を筆頭に良好な性能を得易いので使い方次第なんだが、それよりも被りの方が問題視されて僅少化しちまってるのは少し残念かもだ。
だがそれってのも訳ありで概述 「人耳の弁別能」がMicには無く、狙ったのだけ特性にしとかないと大抵は予想より欲しくない音もこんなに大きく入るのかよになっちまうからだ。
因みに無指向性Micだって2本でステレオ収録が可能だが、それで明確なステレオ感を得るには2本の距離をかなり遠ざけないとならない。
音量差が小さいと方向性が不足するからだが、ハッキリ左右のどっちかに寄ってると認識出来るには最低3dB位の差が欲しい処だ。
殆ど左右のどっちかだけにするには最低10dBは差が無いと無理で、それには左右Micの音源からの距離差が3m以上取れなきゃ可能性すら失せる。
音には距離減衰って性質があるが1m離れると音は通常条件下なら3dB小さくなるもんで、この3dBは感覚的には大体倍若しくは半分位だ。
因みにⅡで「倍若しくは半分 」ってのは近付くと+3dBで倍の音量に、遠ざかると-3dBで半分になるって意味だ。
んでもって本来なら低域だって高域と同じ様に「向きに依って感度を変えたい」処だが、以前から述べた如く音の性質の都合で殆ど制御が不可能なのだ。
ある意味この性質を裏活用したのがステレオなのに「たった1個」のサブウーハで、低域が元から方向性が曖昧なのへ思いっ切り「甘えちゃいました」って感じだ。
尤も初期Beatlesのみたいに完全に片chにBassが寄って入ってるのとかだとボロが出るので、俺的には何時も2個にしといて欲しい処だ。
これらから何処迄が偶然でどっからが意図的か不知だし色々あるだろうが、基本的に高域はMicの「向き」で・低域は「距離」で調整するのがデフォとなっている。
因みにⅢで高域だって距離減衰はしっかりあるけれど、高域は「目立つが低域より弱い立場」にあるものなので様相を異にしている。
これも概述オクターヴ下の音は同音量に聴こえるには、「倍のエネルギーを要す」性質に基づく。
具体的には低域成分不在の純然たる高域音は別として、少しでも低域が含まれてる多くの高域音は高域と低域のバランスに左右されているのだ。
要するに高域は目立つので「入ってる」のが分かれば高音で、分からなかったり入って無ければ低音と認識され易いってこった。
これの典型例は声が小さく口も小さくしか開けない人等へMicが横向きだと、子音が拾えず何言ってっか分かんないよってのだ。
そんな時ハウリングと死闘を繰り広げ乍ら感度を上げるより、Micを口へ真直ぐ向ける方が先決だし効果的だ。
太鼓のマイキングについては真面目に研究し出して日が浅い俺だが、今迷ってるのは「On Mic」の距離である。
PianoのClassic系の録音の仕事体験からすると、弦から1mやそこらでは明らかなOff Micにはちっともならなかったってのがあった。
場所が宅でかなりデッドだったのもあろうが全長約2mのGrandだと、その半分位じゃ如何にもな「離れた感」には程遠かった。
この様に発音源の大きさと距離感には密接な関係があるので、ウィスパーボイスの歌とはこの点でもスケールの桁が違うのを認めざるを得ない。
素敵なお姉さんの声なら1mも離れてれば平常心なのが、耳元5cmとかから聴こえたら身震いでもしそうってなもんだ。
それがドラムセットだと奏者本人すら1m位は離れて聴いてる訳で、それからすると奏者より近ければOn Micと思うべきなのかも知れない。
だが隣り合わせの爆音のTomの分離度を確保しようとすると、Tom間よりMicとTom間隔をせめて半分位にしなけりゃなんない。
加えて件の低域近接効果の問題もあるので悩ましく、この先は次回へ譲ろう。
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