音創り③ バスドラのミュート等編Ⅲ
昨日は従兄の所で先週の続きとなったが、バスドラムのフロントヘッドについて再認識をした。
それは従兄が30年以上前から所持し俺も良く知ってたTAMA Imperialstarの特にバスドラが、今迄未体験の音色へ激変した件だ。
俺個人としては好みの関係で薄々気付いてはいたが、それでも「穴の無い皮を張る」だけでまさかあんなに豹変するとは思わなかった。
従兄とは大昔にもしばしば活動を共にしてたが、従兄+この太鼓で俺の曲の録音をして貰った事もあった。
それ以前の彼は20インチのPearl Rock ’n’ Rollerセットで、悪くは無いが俺には迫力不足で物足りなかった。
その曲はバラードだったから多少ヤワでもOKな人も多いだろうが、バリバリのRock屋なつもりの俺としてはそれでは困る。
そんな時分に従兄がセットを新調したってんで、大きな期待を抱いて録音に臨んだのだった。
録音前から何となく想像よりは中域ばかりで硬い音色と感じてたが、楽器がこなれてくればもっと都合の良い方向へ鳴ってくれるだろうと思っていた。
処が録ってみたら想像以上に低音域の量が少なくて、最初はマイキング等を疑って苦闘してみたりもした。
尤もその音色で一般的基準なら問題無いレベルだったので彼のLive Houseで使った後、今は教室で生徒用にセットされて問題無く使用されている。
現況は硬さは大分角が取れて良くなったけれど、やはり中域中心なのはずっと変わらずであった。
なので昨日迄はずっと「そう云う音の太鼓」だと信じ込んでたら、「穴の無い皮」を張っただけで一気に180°方向転換しやがったのである。
俺が穴無しフロントヘッドへ興味を持った初めは音色だったが、その頃のは半分以上はノスタルジーとか見栄えだった気もする。
それが具体化したのは今は元の持ち主の従兄の手元へ戻ってる前出Pearl Rock ’n’ Roller使用時で、兎に角バスドラにもっと低音が欲しかったからだった。
サイズ・材質等あらゆる面で不向きなのは分かってても、少しでも俺イメージの音色にしたかったからなのだ。
ここで得意の音響理論へ入るが音が空気の振動である限り、オーディオだろうと楽器だろうと何だろうと基本原理は共通且つ只1つである。
Band系音楽を演ってる人向けで参考例を挙げると、GuitarとBassのAmpの「形」の違いにそれが現われている。
それは一部例外を除き大きさでは無く、「スピーカの後ろ側がどうなってるか」なのである。
Guitar Ampではスピーカの「後ろ姿」が見えるのも多いが、Bassのでは裏蓋を開ける等せずに拝める物はとても少ない。
その訳はスピーカの表と裏から出る音が理論的に逆相で、両方がそのまま混ざると低音程「中和」して音量低下が起こるからだ。
ここでの逆相とは空気の震える向きが真逆って意味で、押すと引くが同時になれば当然の如く動かなく(動けなく)なる道理だ。
上図はエンクロージャの上からの断面図で左が所謂密閉型と呼ばれる物、右のは後面開放型で今日ではGuitar Amp位でしか見られない方式だ。
で赤矢印がスピーカユニット前面からの・青矢印は背面からの音の様子で、音は空気の振動なので前側にも容赦なく回り込む。
中高域はまだしも低域は音の振幅の波長が長いので、正相・逆相に依る打消し現象が生じて聴こえなくなってしまう。
因みに裏蓋無しのエンクロージャでもスピーカを取付けてる板=バッフル板をとても大きくすれば回避出来るが、それには数m以上必要と非実用的なので普通は用いられていない。
後面開放型でも両横の袖板を深くすれば同様になるがやはりサイズが巨大となるので、それよりは裏蓋を付けて隔離する方が選択されている。
Guitar Ampだって楽器から出てる音をまんま再現したいなら後面開放型では不適だが、多くの場合求める音色がそれだと低域出過ぎ中高域不足だからなのだ。
バスドラでは理屈的には皮がスピーカの振動板と同等で、音の原理的には同現象が起きているのが確実だ。
これら俺言い「裏開き物」(バスドラだと表か?)の特異性として、スピーカや皮自体は低域を出してるのに少しでも離れると聴こえなくなる処がある。
太鼓は生楽器でも近年はPA常用なのでOn MicにすればPAレス生耳よりは低域も聴こえ、ダブルヘッドのを片方だけにして使われ出したのもアタックの強調・明瞭度向上目的からだった。
しかもそれは石製で良く響く演奏会場が多い欧米由来で、更にその源を辿ればStudio録音時の明瞭度向上に至る。
これもまた録音機材の充実で舐めんばかりの超On Mic集音が可能となったからで、Micが表(こっから叩く方基準)皮直近だと裏皮の音は音量差で出てても幾らも聴こえなくなるからだった。
だが実はそれでも太鼓自体の鳴り方は裏皮有無で結構違いがあり、今日の録音レベルだとどんな素人でも聴き分けられる位の差がある。
ミュート編と謳いながらここ迄皮ばかりだったが、上記の「鳴り方も違う」って事はミュートにも色々な影響が及ぶからだ。
これがウルトラローピッチになると顕著で、妙な話しだが音以上に皮の震えが収まる迄の時間の長さに差が現われる。
大抵太鼓は胴に空気抜きの小穴が開けられてるが、それでも両面張りだと片面のみよりは随分「内部空気の自由」が奪われる。
上記に依って両面張りはアタック音は長くなるが余韻の方は実は短めになってて、「皮の震え」が小さくなるのも早くなっていた。
だから前回迄のビータビビリ問題に対しては音色以外の点でも問題で、従兄が参考にした時期のSimon Phillips本家は打面のみ内部タオルミュートの両面張りとしていた。
本家はその上Open踏みなのを従兄は幾ら達人でも片面張りClosed踏みでは、せめて皮押付け時の剛性が低い(柔軟対応可能な)Speedkingでも用いなけりゃ無茶だったってもんだ。
もう少しピッチを並近くへ上げれば皮振動時間が短くなるから許容範囲に収まりそうだが、現況片面のままのへ意識して耳をそばだてるとどの単打も気持ちダブってるではないか。
生耳対象なら未だしもOn Mic収録にはこれではあきまへんがなレベルで、以前より打点近めにミュートを持って来ても根本的解消には不足だった。
俺自身は技師の端くれの癖にマイバスドラサウンドはほぼ感性頼みの試行錯誤のみで確立させてたが、改めて分析してみたら条件は満たした様だ。
<少し曲がって!?つづく!?>
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