電気楽器Ampの整流管とは 編
一口に電気楽器用の真空管Ampと言っても様々な回路方式があるが、今回は「整流管」に焦点を当てて行こう。
整流管とは真空管式のダイオードの事で、このダイオードとは交流から直流を生み出すデバイスだ。
本件で使われるのはAmpの電源部で、電灯線のAC100V(交流)からAmp回路を作動させるのに必要なDC(直流)を得る為だ。
’70年代以降は半導体の発達で趣味性の高い用途以外には使われなくなったが、コスト・サイズ・耐衝撃性等がその理由だ。
電気物理的性能でも石系(例えばシリコンダイオード)の方が高性能ではあるが、実は音関連機器に用いる場合は若干の欠点も持っている。
ここから少しコアヲタ化するので、興味の無い方は斜め読み願います。
上図が原理説明だが左の赤い波が元の交流で、右の水色が整流して取り出された直流だ。
普通直流と言われたら電池の出す電気みたいに連続で流れる電流を思い浮かべるだろうけど、途切れ途切れになってても±の極性が片方しか無いからこれでも立派な直流なのだ。
だがこんな電源電流をそのまま使ったら機器動作もブツ切りになって困るから、実際には連続且つ極力一定電圧になる様に回路が追加されている。
更に整流の仕方にも種類があってほぼ連続させられるのもあるが、用いる素子が球でも石のでも0V近辺では動かない性質がある。
故に所謂整流回路のみでは、絶対に出力電流は「点線」状態となってしまうのだ。
電気的に正常動作範囲しか使わぬ一般オーディオ系だったら、これからの問題が出ない様に設計に余裕を持たせれば平気だ。
それでもコアなオーディオマニア達はかなり気にしたりしてて、これはデジタルだろうとアナログだろうと動かす源なだけに避けられない問題だ。
それが楽器Ampに最適な古典的回路となると、妙な表現だが「不完全じゃないとイケない」ので影響が大き目に出てしまうのだ。
Amp歪ませ音色を得る為にOverdriveさせても壊れたら困るとなると、場所に依っては敢えて余裕が無い若しくは意図的に足りなく作って置かなくてはならなくなる。
例えば電源がもし無尽蔵だったら、真空管や出力トランスを過大電流で壊してしまうからだ。
よって安全域はどんな無茶しても壊す程電気が流れなきゃ良い訳で、例え音は滅茶苦茶になっても供給限界を持たせる事で機器自体は保護されるのである。
しかしって事は楽器Ampのは貧相な回路にせざるを得ないので、用いた整流素子の欠点を排除し切るのが困難になって来るのだ。
現実的には管球式楽器Ampでも出音が途切れたりはしない様になってるが、
Overdriveさせた時にはこれが強く露呈して音色差が出て来る。
この後辺りからは電気に興味が無くても必読になるが、歪ませた音色のアタック音には露骨な差がある。
具体的には石のだとウルサさ或は無用な刺激が加わり、整流管仕様のだとそれが無く滑らかだ。
個人の好みやニーズ次第ではあるが録音のデジタル化で、昔よりそのままが拾えて音がボケ難くなってる今こそ一考の価値も高まったと考えている。
近年のMESA/BOOGIE Rectifierシリーズが高価になっても、その名の如くわざわざ古臭い整流管仕様としてるのもこれが理由だ。
デジタルだって録音されたのを小音量再生する分にはそんなに気にならないだろうが、特にFeedback奏法等の都合もあっての爆音奏者には下手すりゃ難聴になるかどうか位の違いがある音色差なのだ。
一言でやかましいとかけたたましいっつっても、その中にだって気持ち良いのと悪い或は只辛いのの両方がある。
エレキ歪ませサウンドを使用するのも特定ニーズ以外では、迫力等以外にも「使える」とか「美しさ」があるからだった筈だ。
この辺でまとめてみると整流管仕様では
①音色の柔らかさとナチュラルさがある
②球が1つ増えるせいでサイズ・重量・消費電力等は増えてしまう
③価格がその分上るのと選べるモデルが少ない
④管球式でも整流部が石のの方が大出力を得やすい
等、音楽・楽器的には良いが弱点もある。
先ずは機会があったら一度その音を体験してみるのがお勧めで、要るか要らんかはそれから決めると良いだろう。
その機会自体がちょっと難しそうではあるが、例え整流管無しのでもマトモな音のAmpだったらどれだってそんなにリーズナブルでは無いだろう。
うっかり使えん物に先に出費して買換えを迫られても、予算が減ってるだけなのをお忘れ無くだ。
因みに現代では様々な高度なシミュレーション機器やアプリ等で近似効果は得られるが、少なくとも眼前で吠えるAmpからの音色は全く別物にしかならない。
しかもこれら代用品は利便性には優れるが、良いのになればなる程ちっともお安くはなくなる。
そして最大の差は奏者が音色差から受ける影響で、こればっかりは無意識なだけに制御しようとしても大変そうな処だ。
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