エレキGuitarの歪み➄ Amp歪ませでの音色調節編
前回の続補足編だが、最初は少し珍しく感じられた参考例を提示しよう。
それはVan HalenがEddie呼びになってからの事だが、彼使用のスピーカユニットの仕様が変態的だった件だ。
普通Guitar Amp用のは周波数特性が80~8kHz位が多いが、何と50~4kHzと随分「下寄り」だったのである。
現行どうしてるかは知らんが元はスライダック昇圧はしてても、Amp・SPキャビはMarshallの大凡ノーマルだった筈だ。
この時期少なくとも対外的にはMarshallからPeaveyへ移行したが、俺的にはそこに原因アリと見ている。
Ampの英米個性傾向差は前回述べたが、更に各国の中でもまたタイプが別れている。(た!?)
丁度オーディオ系スピーカメーカと似ていて、例えばかつてJBLは「ドンシャリ」でElectroVoiceやAltec Lancingは「滑らか」みたいな棲み分けだ。
折角のついでなんで久々で脱線させるが、上記は簡単に云えば前者ワイドレンジ・後者は一番目立つ中域のナチュラルさに拘ったって感じだった。
尤も当初は人の可聴帯域をロクにカバー出来て無かったせいか、兎に角重低音や超高音が聴こえる方が流行って人耳感覚的に優れた音色の方が廃れてしまったのは惜しかった。
欧州系ではドイツを除き感性最優先であったがTANNOYは低音の柔らかさからの目立ち難さ、他は物理性能面(特に能率や耐入力)が災いして随分廃れた様だ。
その中で近年ほぼ唯一の例外となったのが、楽器用特化へシフトしたCeletion位だろう。
元は売れなくなって開発費が賄えなくなってたのを逆手に取ったものだが、お陰で昔評判だったのを割とそのまま残せている。
一部弱小系ではコアなのが生き残ったり復活したりもしてるが、近年米で似た立ち位置に居るのがEminence辺りだろう。
楽器用だって新しくて悪くは無いんだが、どうも音色的に古めの素材の方が向いてる様なのだ。
だが原料価格は世相とニーズ等で左右される都合もあって、大手量産メーカではこれが扱い辛くなってしまった模様。
儲けの少ないのへ開発費は回せんよで、スピーカ屋以外で頑張ってるのが前出Peavey位が現況らしい。
そろそろ戻るが米の楽器AmpメーカではFender系がワイドレンジ・PeaveyやAmpegがナチュラル系となってるが、こっちも御多分に漏れずオーディオスピーカのと似た状況に陥った。
本邦ではバブルの影響でBass AmpのSVTだけは妙に流行ったが、それ以外のAmpegの名機は消えたか変貌しちまって久しい。
尤も本家たるFenderだってかなりの迷走・変貌があったりしてるけど…。
この点で異質なのが元から第3勢力!?だったPeaveyで、昔からしょっちゅうモデルチェンジしてるけど音は大して変わんないじゃんってヤツだ。
本体側メーカならまるでRickenbackerみたいな立ち位置で、ある意味個性と本質を維持し続けてるとも看做せる。
けれど音色の「暖かさ」は近くてもMarshallより再生レンジはとてもワイドで、やはり英米差は歴然たるものがある。
Peaveyは最初に支持されたのがSouthernRock系だったのもあって、元のはそこそこ歪ませられるが決して歪ませ至上主義ではなかった。
それでかEddie君好みに深く歪ませると高域過多になるがAmpの方は極端に弄らず、スピーカの方で好みへ持って行こうとしたらしい。
要するにAmp Headででは深く歪ませ、スピーカユニットで再生音域制御と分業させてる訳だ。
電気的に並の真空管回路だけで一定から上の音域を急激に削るのは困難で、Head側だけだと少し出過ぎを我慢するか足りないのを妥協するしかない。
もしハーモニクス(倍音)演奏を多用しないなら平気だが、彼の場合はそれでは見事に支障しちゃうもんね。
対してスピーカは「出す」方は一苦労だが、「削る」のは簡単なのだ。
他にももう1つこれか否かで差が出るのが、低音の「質」みたいな処だ。
楽器で真空管となれば例え生音でも、オーディオ的には殆ど必ず「歪んでいる」状態だ。
これで電気的に低音を増そうとすれば、汚くなるし明瞭度を著しく損ねてしまうだけなのだ。
しかも「低音よ、お前はもう歪んでいる」であるから、音量的に増やすのだって殆どもう無理だ。
HIWATTにGuitar・Bass用の区別が無いのなんかがこれの典型例で、昔の業務用のだとそれに近い仕様の方が普通な位だった。
現に宅のこれもレンタル業者のお下がりのMusicman HD130は最初からBass用で売られてたが、2ch仕様のnormalとBassの「normal」はTone回路が全然Bass用では無い。
寧ろ近年のの方が専用設計度が高く、応用が効かなくなって久しい。
今では音量の場所への適応性の為Amp歪ませが特にLiveでは稀有な様だが、メーカにしても昔の方が基本的性質を分かってた気がしてならない。
これも概説だが人耳同音量でも音程次第で、電気的音量はOctave下がると倍になる。
故に余程出力容量に余裕が無い限り、Amp Headで低音を出そうとするのは非合理になるのだ。
尤もGuitarのAmp歪ませでは逆に如何に余計な低域を削るかが肝であるが、Johnny Winterのセッティングも又一見極端だった。
彼はMarshallだって使ってたが最もデフォだったのは、Musicman 410-130HD+Gibson Firebirdの組合せだろう。
Guitar PUはFrontが主で本体Toneは適宣絞り、AmpのToneは今回の俺同様Trebleだけ10で他は0だったそうだ。
今回自ら体験する迄は流石にそれは都市伝説だろうとずっと思ってたが、期せずして必要性に迫られ認めざるを得なくなってしまった。
まったく生音時と深歪ませでは同じAmpでも随分豹変するもんで、Bassの時は低音がもっと出せたら面白いのに厄介な話しではある。
過去のBass Ampの名機代表としては球ならFender BassmanやAmpeg SVT等、敢えて取り上げる石のならAccoustic辺りか。
前者は兎に角スピーカユニット数が他より多いのが特徴で、音響物理学的には振動板の面積の広さが低音再生量に直結している。
当初は偶然だっとしてもMarshallがGuitar用でもこれが4~8コで標準が続いてるのも、スピーカで低音を稼ぐ意図が汲み取れる。
その分「頭」は思い切って高音専用に持って行けるから、深歪ませに適している訳だ。
因みにAmpeg SVTで10inch(25cm)なのは高域も出したかったからで、開発当時低音が出せる大きいのは高域が出せるのが無かったからだ。
実際Bassmanで一番人気(ベーシストに)なのは100Wクラスで1箱に12inch(30cm)×4ので、低音のリッチさは見事だが現代で云う高域は全く出せない。
楽器本体がFender系みたいに高域豊富なら結構だが、そうでないのだったら昔の音色でも困る場合がありそうな程度だ。
今だってSubwoofer用のユニットは低域再生限界を低くすると、超高耐入力は可能でも低能率のしか作れていない。
SVTが1箱に8コなのは能率以上に耐入力の都合からで、かつては小口径で大入力ってのが難しかったせいだ。
あたかもまるで昭和の日本の人海戦術みたいになってるが、ここ迄大量で箱も巨大なら前出音響物理学理論で低音も大幅増大って寸法になっている。
敢えて取り上げの石のについても出力・キャビサイズとも巨大で、ユニットは最大でも4コだが箱自体は結局Ampeg並大きさとなっていたからだ。
バスドラムでは大小があるにしてもその差が、例えば26と18でも2倍迄は行っていない。
それもあるので音域よりも最大音量の差が大きくなるが、こう云う例外以外は基本低音を出したきゃ「デカくしろ」しかないのだ。
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