エレキGuitarの歪み③ 余韻を伸ばしたいけど編
エレキGuitarの歪ませには音色の他に、コンプレッサと近似な要素も内包されている。
過去例でも音色より余韻延長が主目的で歪ませた者も多いが、無制限に伸ばしたいならフィードバック奏法の方が強力だ。
今更だが要因解説に加え、歪ませ・フィードバック・コンプの3者比較をしてみよう。
その前に音響学的なフィードバックの立ち位置であるが、大まかに3種類ある状態の内の真ん中だ。
フィードバックの極限に達したのが所謂ハウリングで、これへ到達するとほぼ制御不能となる。
そのどっちでも無いのが単なる普通で、平常時と言えるだろう。
奏法歴史的にはフィードバック→歪ませ→コンプの順で可能となったが、コンプ自体は放送用リミッタとしてそれ以前から存在していた。
これが中々活用されなかったのは貴重・高価の他、Guitarにそこ迄音の長さの要求が芽生えて無かったのもあった様だ。
現代比でかつては音を簡単に伸ばせる楽器の利用率が高く、一例としてオルガン系等を耳にする機会が以前より随分と少なくなった。
現代主流のとは手法が少し異なるが、フィードバックを最初に世間に認知させたのはBeatlesのI Feel Fine辺りだろう。
当時は意図的歪ませ前夜であるから、Ampの入力感度(ゲイン)を上げる(歪ませる)のは無しだ。
しかしスピーカから出た音で弦が振動してくれん事には、音のループ現象を起こせない。
Amp入力が高感度だと僅かな弦振動でも大きな音が出るからループが成り立つが、これの裏を返せば部屋が揺すられる様な爆音が出せるなら弦も揺すられる。
そこで最初に爆音Ampを使う羽目になったのがBeatlesなので、始祖的扱いとした。
また高音では爆音でも音の振幅が小さいから、死にそうにうるさくても振動は小さい。
だが低音は低くなる程大振幅で振動要素が増して行くので、例えばスピーカキャビネットへ楽器本体を接触させるとループさせられる場合がある。
フィードバック奏法とは要するに出た音の振動エネルギーが、入口の弦に伝わりさえすれば方法は何でも良いのだ。
この第1方法の長短だが利点は音色を歪ませなくても済むのと、特に低音域の場合は「付ける・離す」に依って制御が確実・安易な処。
欠点は何と言っても超爆音じゃないと無理な処で、音色の魅力が弱かったからか使われるのが少ない様だ。
しかし俺体験で歪ませでも音色の都合でフィードバックさせるのにゲイン不足の場合に実際に活用した事があるので、気付かんだけでこっそり使われてる可能性は否めない。
続いて第2方法「歪ませ」へ進むが、これにはフィードバックをさせなくても音を伸ばす要素がある。
理屈としてはコンプと同じで楽器から見て出力音量が、見掛け上大きい音は小さく・小さい音は大きくなっている。
実際は大きいのは歪んで音量増加が抑え込まれてるだけだが、音色差はあれど無歪設定と比べたら余韻の小さくなるのを遅らせられる。
尤も供給源の弦振動は「次を弾かないと」時間の経過でやがて止まるので、タイムリミットがあると言える。
これが半ば自動供給されるのが所謂フィードバック奏法で、上手くやれれば幾らでも音を伸ばしていられる。
だがこれを維持させるのはかなり困難な上、音色にも結構制約が掛ってしまう。
しかも冒頭で記した如く「行き過ぎ」ればそれはもうハウリング領域で、そうなると弦を手で抑えてもPU自体が微振動したりして止められなくなる。
処がその「際どい領域」が最適だったり、それでも広くない一定範囲の音域でしか効果が得られない等扱いがとても大変だ。
折角ある意味エレキの専売特許で魅力もあるが、これ等が原因で何時でも何処でものは滅多に耳にしない。
そして第3方法のコンプは歪みレス延長も可能だし、第2方法より扱い易い。
だが歪まなくても全く音色変化が無い訳じゃないし、フォルテは可能でも音量的にフォルテシシモは無理等の弱点も併存している。
人耳に「小さいのが大きくなった」でも、機械的にはノッポをチビの背へ合せる様に強制的に中腰にさせてるだけだからよ。
なので伴奏系には平気でも表情豊かな主旋律担当時には、奏者側に特別な配慮が要求されるし万能では無い。
結局は状況に応じ使い分ける訳だが、俺的には求める音に係らず極端設定をデフォにするのはお勧めし兼ねる。
例えば激烈メタラー君が宅練するのに音量出せんから、無謀ハイゲインでフィードバックの練習なんてのが割の悪い練習方法だ。
本番で生の爆音ツーバスに見合う音量・鳴り響く会場等と、音場が異なると家でのとは全く状態が違ってしまうからだ。
俺推奨の出音(余韻)延長練習の第1段階は、先ずは許される範囲で大音量で演る体験だ。
昨今のJ-POPではポピュラーとは言い難い深い歪みも多用されてるが、爆音になると寧ろ不要フィードバックやハウリングを回避するのに四苦八苦させられるだろう。
ある意味そのヒントが最初の方に記した「第1方法」で、知ってて損は無い。
また近年ではボディに空洞や穴の開いてるエレキは余り使われてない様だが、これらセミアコ―スティック・フルアコ―スティック等は周囲音に敏感だ。
ソリッドボディのと比べるとフルアコは、望まなくても実に簡単に第1方法へ到達してしまう。
元は主流だったフルアコが取り回し等以外の都合でもソリッドへ移行したのは、これに依る処も大きかったからなのだ。
Rock系太鼓に見合う音量になると全く歪ませて無くても、ハウりゃせんかと心配ばかり。
そんなだから歪ませたいとなりゃ、余程のニーズが無けりゃ真っ先にスルーされる様になっちまったのよ。
でもアコ系のボディ由来の独特な癖がある方が、楽器的には魅力が多いと思う。
見た目・機能では大昔DEVOが使ってた「胴体無しGuitar」は面白かったけど。
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