エレキGuitarの歪み② Ampだけでの悲喜こもごも編
実際にこれをやろうとすると数多の困難を伴うが、それは今日の電気楽器が便利過ぎだからでもある。
便利自体に罪は無いが、楽器や音楽は元からそんなに世間に都合の良いものじゃないのを思い出しとくれ。
もし生楽器だったら且つ大音量とか大型のだったら、今だってちょっと音を出すのすらひと苦労だ。
それでもどっかで誰かがまだやってるのは、そうでもしないと所望の音が得られないからに他ならない。
今回は問題となりそうな点の洗出しと、それの解決策を少し提示するとしよう。
一番手はAmp直歪ませの大音量問題で、小型低出力であっても必要サイズのスピーカが付いてるとかなりうるさい。
このサイズは最低20cm出来れば25cm以上のが望ましく、それより小さいと普通のAmpとは性質がかけ離れてしまうからだ。
歪ませないならスピーカで足りない低音を回路側で大きく出して補うのも可能ではあるが、それだと歪ませた時に違いが出てしまう。
エレキGuitar本体からは所望より元々低音が大きく高音が小さくしか出せなくて、Ampでは高音を中心に増幅させているのだ。
またその方が歪ませた時の各弦のバランスが良く、能率稼ぎの為に大き目としたスピーカは偶然だったが低音程大きく鳴る。
結果的にこれで全体としては±0となるが、この特質から次の分業が行われてると看做せる。
高音はAmpで増やし低音はスピーカで稼ぐってな感じで、特に歪ませるには上記の理由で回路側では低域より高域を増幅させねばならない。
低域過剰になるとその悪の歪み!?は他の帯域を侵食してしまい、何をどうしても壊れたFuzzみたいな音しか出なくなる。
このスピーカサイズは能率と比例してるので、たかだか30Wでも30cm×2が載ってるVOX AC30が太鼓の前でも何とか聴こえるたりするのだ。
それでも10W以下のなら太鼓より全然小音量だし、低音が太鼓の低いのやBassよりは含有量が少ない。
なので上手くすれば俗に云われてる「ピアノ防音」レベルの遮音がなされてる部屋だったら、何とか許容されそうだ。
音量環境にとても恵まれてるならMarshall Wallでも何でもご自由にだが、普通大舞台よりは多分狭いのでそこへ注意が要る。
つまり求めるだけ歪む前に楽器とAmpの距離不足から、その巨大出力に依ってハウリングが起きたりするからだ。
スピーカユニット数が多いと大抵は能率も高く、深目に歪ませたいなら室内で100Wだとこの面でちょっと厳しい。
二番手は出音の音量が自由に出来ない欠点で、AmpをOverdriveさせるからにはその公表平均最大出力より少し大き目のだけになる。
具体的には30Wのなら35~45W位・60Wのなら65~80W位等となり、それよりボリウムを下げると歪まなくなったり歪みが減ったりする。
因みに上例の「~」はAmpの回路方式に依る巾で、その間を自由に選べるって訳じゃ無い。
電気楽器の癖に音量の自由選択が不可になるのは不便を感じるだろうけど、生楽器だったら至極当たり前の処だ。
しかも最大音量の選択肢は少なくそれらの間のが無いのも当然だが、普通ならほぼ誰も疑問を抱かないよね。
大抵はどうせ生楽器と合奏するだろうし、電気楽器特有の性質だけに囚われなければ大した問題じゃないのが分かるんじゃないかな。
三番手は歪みの深さで今日では一番の懸案になりそうだが、無歪~歪み迄は無段階選択が可能だが「それ以上」が不可能だ。
これは本趣旨に於いては特例に属するもので、予め深く歪ませられるのを探す必要がある。
但し極力単純で必要最低限の回路構成の推奨で、多機能・高機能のは便利だがある意味Effector内臓Ampと見做せるので基本性質を体験するのには全く向いていない。
少々クドイが本趣旨では音経路に石(半導体)不使用の真空管Ampが激烈推奨で、何処か一ヵ所でも石を通ると性質が異なってしまうのでNGなのだ。
そして一部の拘りの高級機以外だと、多機能タイプには音色でなくチャンネル切替の為でも石が使われててやはりNG。
今回のこの制約は原始的歪ませメカニズムの体感に必須だからで、付いて無いのへ追加は簡単に出来るが逆は専門家依頼の改造しか無理だからよ。
これは演奏自体の練習と似てて、基礎が不足し過ぎると即興が不可能になったりするのに近い。
俺自身スケール練習はちっとも熱心では無いが、予め練習しておく程思い付いたメロを瞬時に弾けるのは確かだ。
只で楽したいか手間でも自由を獲得したいのか、何にでも共通のある意味究極の選択ってもんだろう。
四番手はGuitar出力の大小についてだが、この原始的歪ませ式では歪みの深さに直結してしまう。
そこでストラトでレスポール並に歪ませるのにBoosterを用いたりもするが、使用時にはこれも注意が要る。
具体的には一般的範ちゅうの高出力Guitarと同程度の歪みが得られる処迄とするのが良く、調子に乗ってそれ以上Amp入口でブーストさせると不都合が出て来る。
前回記した如くこのやり方ではAmpは通常回路の「後ろの方」で歪むので、歪みや音色の性質が変容してしまう。
これが最悪時は故障させるのも皆無では無いが、それ以上に先ず音色調整が適正範囲から逸脱してしまう。
これも前述の如く歪ませに依って周波数特性(低・高音のバランス)が変化するからで、それ故Brian MayはTreble Boosterを用いているのだ。
機器名称イメージからだとキンキンキャンキャンな音になりそうだが、実際彼の音は歪みは軽くないがどっちかってば音色はマイルドだと思うがね。
もし殆ど歪ませなければ大昔のGeorge Harisonみたいにブライトになるけど、高域が先に歪んで音量が「頭打ち」になるから起きる現象なのだ。
そう云やGuitarは違うけどAmpは同じのだったから、これって結構典型的な参考例だわな。
徐々に悲喜の喜へ自然と移って来てるが、上記の様な事例が色々付いてるのとか石のAmpでは充分な体験が不可能だ。
それと今日本邦では使用例が見当たらない様だが、特に軽い歪みを得ようとした際に純球単純と複雑石のでは大きな違いが出る。
歪みが球では徐々にだが石では突然訪れる感じとなり、特に歪ませないつもりで歪んだ時に石は急に聴き取りが劣化するのだ。
そもそも電気楽器の音だとオーディオ的「歪率」の音色への影響が格段に小さく、楽器音として明確な境界線は存在しない。
その代り過渡特性(弾いたのへの反応)差は僅かでも、人耳には別物な程違って感じられる。
それ故本番では使わなくとも練習時は奏者に厳しくも、弾いたのの違いがそのままかそれ以上に出てくれた方が理解が高まるのだ。
音色的な面だけに限定すればどんなのを用いても結構なんだが、それの影響が弾き方に悪く出てしまう可能性はとても大きい。
Effectorも良い物になる程「マトモに弾ける人」へ最適化されているので、無意識でも悪い癖が付いてると本領発揮が不能となってしまう。
発音が機械化率100%じゃない限りこれが着いて回るが、自由獲得の代金みたいなもんだ。
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