ドラムのパワーとトーンの関係性考察(前回の物理分析)⑩
ひょんな事で経験値が上がったバスドラのウルトラローピッチ、低い方の一極限状態はかなり参考になった。
高い方なら極限じゃないにせよ、Snare等で割と日常的に誰でも体験してるだろう。
けれどホントはあった両極の片方だけでは、性質と傾向を理解し切れて無かった気がしている。
Floor Tomのウルトラローでだって似た体験は可能だが、皮の面積が小さいからベロベロにすると音程が殆ど聴こえなくなる。
そこで研究、先ずは俺らしく物理分析だ。
少々回りクドイけど音の色々を表す言葉から行くが、音は目に見えぬせいかどうも物理と文学では洋の東西を問わず表現の整合性が乏しい様だ。
例えばエレキギターのアーム呼称にTremoloとVibratoの2つが使われてるが、前者の方が使用例が多い。
だが音の変化の内容に対して正しいのは後者の方で、音程が揺れるだからだ。
最初は単なる取り違えだったかもだが、それで恥の上塗り紛いが起きている。
Fender Ampの内臓Vibratoは名前と内容が逆で、音量が大小に変化するんだからホントはこっちがTremoloなのだ。
けれど感性(文学的)に基づき兎に角「音揺れるの」に拘れば、物理的に不正解でも感覚的に捉えやすい方を優先しても必ずしも錯誤と言い切れぬ。
しかしそのお陰で使う側への誤認を助長する面も出て、余計な困難を後にもたらしているのだ。
そしてこれは音量等もご同様になってて、音の大きさ=音量も実は物理的には誤りなのだ。
これを持出したのは太鼓みたいに時間の短い音を正しく捉えるのに必要だからで、音が大きいのに短過ぎるせいで音程が聴き取れなくなる等妙な現象が色々起こるのに備えての話しなのだ。
加えて近年本邦では文学的「音圧」の横行で益々訳を分かり辛くしてしまってる様で、本来は音圧こそが瞬間最大音量を表すのに適した言葉なのだ。
これも巷では「逆用」されてて音の密度が高い様等、本来なら是こそが量が多いんだから大音量なのだ。
ではウルトラローピッチの分析へ入るが、瞬間最大音量はノーマルピッチに対してどうなってるだろうか。
物理らしく行くと「皮の張り緩い」→動ける巾拡大となるので、ピッチが下がる程瞬間最大は実は増加してるのだ。
けれども「張り緩い」→反発力弱い→振動終息が早いで、音の出てる時間は短くなって行く。
何故なら叩くのは「一度きり」なので、その後の音は「反発力」エネルギーで出ているからだ。
冒頭のFloorのウルロー聴こえんくなるのその1はバスドラより振動面積が小さいのが原因で、径が小さい分大きく振れられないからだ。
又この小さいは音長さの短縮にもつながってるが、それも余韻のみならずSynthesizerで言う処のDecayも短くなって行く。
因みにDecayは厳密には正確じゃ無いが、ここでは大凡アタック音+音程認識に必要な長さの音の出始め部と考えて貰おう。
物理的にだとアタック音にはその音本来の音程は含まれて無く、日本語的に値するのが子音だ。
子音だけではどんなに大きくしてもヒソヒソ話しみたいなのしか出来ず、歌のメロディーは雰囲気を再現程度で精一杯でしょ。
方や母音は言葉化には不足だが音程なら完全再現可能で、しかるにこの要素が鳴らないと音程判断が不可能だ。
前回Simonウルローはオープン踏みじゃないとってのがここに係ってて、超低音程は只の1個でもそれなりの長さを要するからなのだ。
因みに更に低くなれば音としての認知は不可になるが、今度は振動として認識可能となって来る。
でFloorに戻ると振動面積が元からバスドラより小さい→短いので、音程再現限界も早めに訪れてる訳。
なのでバスドラだと限界値は高くなるが、それでも音の量は並から低音程へ向かう程減少するのだ。
だから瞬間最大が増加したにも拘らず、聴感上の音量はどっちかっつうと減少した様に感じられるのだ。
「音が聴こえる」には他より大きいからの他に、「他より長く出てるから」も含まれると思って良いだろう。
んでこれが当節お流行りの「音圧」で、ある意味「質より量効果」と言っておこうか。
だが度が過ぎると隙間が無くなり過ぎるだけで、「太鼓らしさは放棄された」も同然だ。
太鼓は瞬間最大音量が群を抜いて大きいが、爆音の時間は短いお陰で他種楽器とアンサンブル出来てるのである。
アンサンブル内での太鼓の責務はリズムなので短くも出来るってもんで、低音でいながら明確な音程を求められるBassには無理な相談だ。
こんな風に単純な音の大きさ以外の色んな性格が楽器毎に違ってるのもアンサンブルの醍醐味だし、それで混然一体に共存させても判別が出来るのだ。
だから無理くりコンプで闇鍋サウンド化させるのは、実はパワー感には負の作用をしてしまうのだ。
その楽器にだけ許された「特権」をはく奪するも同然だから、やたらむさ苦しい割には非力になってる。
これが猪なら牙をもがれて豚の大群になるだけで、圧迫感こそ凄まじくても強そうではもう無くなってしまうのよ。
コンプ始祖たるBeatlesでの使われ方は、生と記録物の差を埋める為の一手法に過ぎない。
生では楽器と聴者耳間の空気が作用して、AttackやDecayかマイルド化されている。
距離が増す程瞬間最大とその後の音量差が縮まり、相対的にDecayが長くなった様に聴こえるのだ。
これには残響も大いに加担していて、一番最初の反射音がAttack音と耳で分離出来なければ長くなったように感じられる。
時間軸以外にも結果的に音の種類が増えるから、一般的にエコーを掛けた方がリッチに聴こえるのだ。
そして中々体験困難そうだが広い原っぱで叩ける機会があったら是非一度は体験してみて欲しい、普段よりえらくショボく聴こえるから。
それが室内で特にOn Mic収録するとこれ等の作用の含有率が著しく低下するので、そのままでは実は生耳とは違う音になっているのだ。
本家のはそこを補正しようとしただけに留め、特定意図の無い限り楽曲表現に必要な強弱は損なわれない様に配慮されている。
現に用いられた機器はコンプレッサでは無く、ラジオ放送用リミッタであった。
近年本邦の悪習はもしかしたら呼称誤用から、音圧の圧力の意味を間違えたのが始まりなのかもと勘ぐってしまう。
隙間の無いのは確かに圧迫感を与えるが押されっ放しなだけで、その力は必ずしも強いとは限らない。
なので弱さを隠し誤魔化すのは出来ても、クライマックスの「押しの強さ」は寧ろ封印してしまうのだ。
他楽器ならまだしも瞬間最大が武器の太鼓にとって、これではある意味丸腰にされるも同然だ。
対比で強さを明確化する為にも、必要悪ならぬ必要弱を排除しては為にならんので御座候。
すべからくドラマーが無理くりコンプを自ら求めるのは、自殺行為なのである。
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