ドラムのパワーとトーンの関係性考察(一応私的)①
先週実験の折にヘッドやミュート等の会話も少し出たが、そこから歴史込みで探って行く。
一々歴史ってのも年寄り臭い気もするが、生楽器は環境変化の影響をモロに受けるので無視出来ぬのだ。
殊に本邦の今日では狭小空間でも俺言い「無駄PA」全盛と、半生がデフォルトになりつつあるから深刻だ。
我々位の世代迄はRockへの関わりが遅く無ければ、辛うじて一流人の生のを体験する機会が残っていた。
それも単体だけでなくアンサンブルとしてもで、その一流人達は最低限PAでレコードに遜色無い寧ろそれ以上の音を奏でていたのであった。
そこから小細工せんでもかなり本当は行けちまうのを知れたが、その点今の若者は可哀想な状況下に追いやられたと思う。
基本生の時代は太鼓の皮1つとっても今より無加工のが多く、理屈からしたら聴き取りはそんなに良く無い筈だ。
けれど実際の現場では寧ろ今より断然クリアで、だからこそきっと小細工アイテムのニーズも低かった様に伺える。
それと関係してるか確証はまだ無いが、今日でも超一流の者は太鼓のミュートが少ない様な気がする。
自分の体験からも生は未だしも録音すると、演奏が下手な内はミュートしないと雑音だらけで使い物にならなかった。
同時期・同環境で従兄が叩くとそれが不要で、以前触れたがそれどころかコンプすら不要で最後まで楽々ミックス出来てしまった。
俺はこっち系では弦が先だったので当時はこの現象へ違和感があり、エレキなら下手が深く歪ませりゃ何処ぞの街宣車並みに訳が分からなくなるからだ。
因みに俺の楽器歴と云えば最初はホントの三日坊主に終ったオルガン教室で、その次は我流のボンゴで当時小3位だった筈だ。
今ならこんな僭越は起きんだろうが当時もう既に洋楽Rockに行き切ってたのに、歪みに無縁の電動オルガンでは続く方が奇跡的だろう。
ボンゴにしても俺も親も無知だった為に、本来演ってみたかったコンガでなかったので止めはしないが休みが膨大という結果をもたらした。
今なら例えばBABY METALにハマってる子に意図無しに、フォークギターを与える様な真似は誰もしないだろう。
だが当時の世間の認識なんてその程度で、中学の途中での初めてのエレキギターも酷い偽物であった。
それがデパートの楽器コーナーで堂々と陳列されていてと、今からしたら何で通用してたのか全く信じられない低レベルだ。
値段だけで比べたら俺のは¥1.5万で、子供に買ってやったのは¥9千だからケチな親と思われ兼ねない。
しかし中古の程度の良い格安品を知識と経験から上手く探し当てただけで、元値は¥6万だしFERNANDESと子供のは至極マトモだ。
けれども折角物や文化に関しての知識が浸透した代わり、弾き方や扱いの一部は却って退化してしまってる様に感じる。
Rockの本場の欧米でさえ当時の特に太鼓等だとRock用と謳われててもせいぜい大きさと組合せ程度で、物自体は他ジャンルで使用されてるのと全く同一だった。
そのままでは不足を来す場合もあったから独自改良などは多少なされてたが、根本的には道具でなく「演り方」だけで各ジャンルの音楽を成立させていた訳。
だからもし競争でもしたら今の若造がフロイドローズ付きのギターでも、昔の泰仁はボロいフォークの弾き語りで圧勝しちまうかも知れんのよ。
道具は大切だが演るのが人である限りは、人が道具を上回ってる位でないとRock度は高められないとオッサンは思っとるんで御座んス。
それに機械だけでもこう自由に演れる様になって来ると、単にヘビーな音ならいとも簡単に出せてしまう。
だからって必ずしも迫力が最大へ持ってけるでもなく、安定し過ぎで冷静な音は人の興奮を完全に呼び覚ますには役不足なのだ。
加えて人には慣れがあるのでどんなに凄くても一定の音では、最初は驚いてもそれだけで終わってしまう。
それを超越するには寧ろ出だしから全開では駄目で、敢えて弱さを何処かへ盛り込んどかないと強さの強調や誇示が出来ないのだ。
もし美味く叩けてJazzの道具なのにあんなヘビーな音が…なんて方が分り易く、Ginger Bakerなんかがその典型だろう。
パワードラミングの象徴たるBONZO(John Bonham)の楽器は小編成グループとしては26インチは巨大だが、特注品ではなく彼が使うより随分前から売られてた物だ。
Jazz全盛時のそれこそホントのBig Bandでのニーズから、もっと言えばクラシック系の大編成オケ辺りが最初の必然として作られただけだ。
大人数の大太鼓をJazzでは他のと一緒に1人で演るってんで脚付けてと、物の変化は極僅かで大きく変わったのは使い方なだけなのだ。
皮(ヘッド)はEmperorだから標準より厚いけれど採用の主眼は耐久性で、ワンステージ持たせたかっただけ。
これは2枚重ねであの程度の厚みとファイルのクリアホルダーみたいなもんで、和太鼓などの本革物より断然薄くてチープなもんだ。
バチにしてもマーチングやその練習用のでもっとヘビーなのもずっと以前からあったが、使い方(叩き方)と場所(単体でなくセット)が従前とは違っただけだ。
でも考え様によっちゃまさか「そんなのであんな音が出るとは」が特許レベルの発明同然で、寧ろ比較対象があったからこそ余計突出して目立ったんだと思われる。
本邦とは異なる環境なので若干想像困難かも知れないけど、あちらでは色んなオーケストラや鼓笛隊は日常的で身近に溢れていた様だからね。
差し詰め相撲取りがプロレスへ転向したら、思ってたより身のこなしが全然速くて驚いたとでも比喩しとこうか。
最初の内は何が原因でも他よりヘビーな音ってだけで耳目を集めるが、下手に道具の効能が大き過ぎたら売れるのは楽器だけだ。
楽器屋のプロモーションならそれで大成功なんだが、演る側としては人が売れてくれないとしょーがない。
しかも誰が演ってもだと物珍しさが無くなれば短期間でブーム終了、只のバリエーションのひとつへと成り下がりその他大勢へ編入されるのだ。
悪い楽器商人は売らんが為「これさえあればあなたでも、今すぐ立派なメタラー」等と囁きかけて来るかも知れんが、騙されてはこっちの負けですぞ。
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