アンサンブルの低音の作り方Ⅵ
今週はツーバス案件とは別に、バスドラのゴーストノートの事を従兄の先生に教わって来た。
以前から個人的に気になってた作品があって、それの演奏の専門家としての分析をお願いしたのだった。
近年ではほぼ皆無になったバスドラのゴーストノートだが、実際その有無でアンサンブルの低域の表情が別物になる事もあるからだ。
近年本邦ではスネアのもゴーストノートはすっかりマイナー化して淋しいが、こちらはあたかも皮や胴は鳴らさず響線(スナッピー)だけを鳴らす様な手段だ。
なので弱いアタック音だけを付加する効果だが、バスドラの場合は真逆となる。
スティックチップより軟らかかったり広面積での打撃なので、弱めるとアタックと余韻のバランスが逆転するのだ。
Jazz全盛期には多用されていたが如何せん「主張しない技」だからか、最早殆ど幻の技に近くなってしまったかも知れない。
俺自身お遊びレベルだが時々雰囲気だけでも味わいたくて、典型的4Beatを刻む以外で実際使いたくなった事が無い。
それなので純然たるRockでは使われないと思い込んでいたが、今回の分析で見事に勘違いが証明されてしまった。
で件の作品ってのはJohnny,Louis&CharのHead Song(アルバムOiRAの1曲目)の事で、アタック音を頼りに拾うと基本バスドラは4つ打ちだ。
がそれを低域成分や余韻に頼るとどう聴いても8つ入ってて、俺の愚頭はシャットダウンしてしまっていた。
ドラマーのジョニー吉長氏の足癖由来で偶発した事として、腑に落ちないが長年仕方無く勝手に処理していたものだった。
今回従兄の先生の分析方法はパソコンソフトで低域だけを抜き出して聴く方法で、それだけなら音響屋の俺には元からあった発想だった。
だがそれで判別可能なのかがこっちは分からなくて、専門家はバスドラが「どう聴こえる」ものかを熟知してるので確実に自信の持てる処が大違いだった。
結果は「意図的にそうしてる」のだそうで、バスドラの幽霊側の音が安定して同じ音になってるのがその理由だと素晴らしい説得力だった。
俺が知る限りのライヴバージョンではこうなってるのが無くて、しかしそのせいかどうも全体のリズムニュアンスがスタジオ版と違って聴こえた。
彼らの録音物の中ではこのUSA LA録音のだけベースが小さ目で、しかし当時全盛期のLAサウンドではデフォルトの楽器バランスだ。
奏者本人が早逝しちまった今では確認はより困難になってしまったが、俺には「低域の刻みが足りなくなった」のを補おうとしてた様に想像された。
’80年代前半迄限定だが俺知りでは一部例外を除き、アメリカでは太鼓が大き目でイギリスではベースが大き目なバランスとなってた印象がある。
因みにこの例外はアメリカ南部ので、例えるなら全体像は乾かした英国サウンドって感じだ。
ベース音量の都合からかUSA(LA)系はギターの音も低音控え目で、サザン系はその逆だった。
これは端的に云うとRockの伴奏で良くある「ジャンジャンジャン…」がLA系では軽やかで爽やかに、サザン系では力強く聴こえて俺好みでは後者有利だ。
公共利益を考えて脱線から早期復旧させる!?が、件の曲ではフレーズ的には8Beatを継続的に鳴らしてるのはBassだけだった。
躍動感は要るがテンポだけに頼れる早さじゃない曲で、ドラマーが誰も演ってくんないなら俺がとしたみたいに感じる。
因みにジョニー吉長はツーバスもしばしば操るが、この曲の該当箇所では彼得意の「Hi-Hatの踏み叩き」をしてるので片足なのは確実だ。
まあ彼等の様な例は簡単には実行し辛いし稀だろうけれど、楽器を更に加えたり派手にEQする以外にも方法があるのは分かって貰えるかと思う。
ベースのピック弾きでも熟知若しくは熟練者ならアブノーマルも可能だが、並の腕前ならアップダウンで行くか疲れても全部ダウンで行くか。
それだけでも太さや低域と中高域のバランスとか、結構ニュアンスが全然違ったりもするもんだ。
さらに付加えるなら音によっては弦楽器は「違う弦」で同じ音程になる場所があるが、その時何処を使うかはかなり影響大だ。
奏者目線で弾き易さを優先すると近辺が良いが、達人の中には状況に応じて敢えて「遠い方」を弾いたりしてるのを注視して欲しい。
単体で大差無くてもひとたび他楽器と混ざると、全然違ったりして来るから。
かように後からの小細工より元がどうなってるかの方が影響力は大きい訳で、その時点ではちょっとした違いを放置しないだけで結果に差が出てしまう。
俺知りのバスドラゴーストノートのもう1人がRingo Starrで、これの証拠が「Speedkingのリンゴ踏み」で以前紹介した動画にハッキリ映っている。
こちらの場合は聴き味と云うより恐らく死活問題由来で、最悪環境下で兎に角何とかリズムを他のメンバーに聴こえる様苦心した結果の様に見える。
丁度J,L&Cとは真逆のニーズになってるのが個人的には面白かったが、Beatlesの方がもう他に手段が本当に無いのだから意義は大きいだろう。
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