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2018年7月24日 (火)

エレキギター修理の話し③

今回は若干タイトルに偽りありになっちまうが、エレキギター本体のシールドについてだ。
私事情だが今シリーズ前々回のは原形復元・維持指向、前回のはコンディション回復が目的での補修だった。
前者はNavigatorのストラトで後者はヤマハのLes Paulだったが、逡巡した上で結局は未実施とした。
だが近年の様にハイゲインで歪ませる機会が多いと、施して置くに越した事は無い。

ここで言うシールドとはコントロールキャビティやピックアップについてで、ケーブルの事では無い。
寧ろケーブルが折角完全にシールドされてても、ギター側に「隙」があっても放置されてる不合理について文句を付けてるのだ。
電気におけるシールドは伝達系の過半数量位になると効果が出て来るが、本質的には隙があったのでは本来の効果が充分には得られないのだ。

Navigatorのストラトは個人レベルだが歴史的要素があったので、余程不具合でなければ当初から元の仕様を維持する積りでいた。
「そのなのであんな音を出してた」を再現可能な方が好ましかったからで、これは例外の部類と捉えて頂きたい。
ヤマハの方にそれは無かったんだが最初はなるべく格安にって事で、必要性が生じたらその時点で施工する算段としている。

エレキギターの創造期には今みたいにギンギンに歪ませる事は無かったから、不完全なシールドでも実用上さして問題にはならなかった。
ベースにしても今みたいにハイをタップリ出す事が無かったから、やはり同様だった。
しかしハイゲイン(歪ませないベースでも高域は)となると、それまでは楽音に隠れてた雑音も表にハッキリと現れる様になって来る。

そんなに多種のギターの中を覗いた経験があるとは言えぬ俺だが、それでも製造時からきっちりシールドされてるヤツは稀だった。
エレキは原理的に幾らシールドしといても電磁雑音は必ず拾ってしまうものだが、だからって減らせる雑音を放置するのは頂けない。

結局はコストの都合なのかも知れぬが、どうも不適合になりつつある伝統を引きずってるみたいで何かとこの業界は保守的な感じだ。

ウチでも過去例でプロが使ってるGibson Les Paulの修理時に、特段要望はされてなかったが迷わず銅テープの貼り込みを実施した。
持ち主がハイゲインを常用するのを知ってたし、実際にそれを再現実験してみたらシールドの有無で大差が出たからだ。
前出歴史云々以外で強いて例外となりそうなのはローインピーダンス仕様の場合で、それもアンプもローインピーダンス限定なら大丈夫かも知れない。

このシールド問題だが他方面ではどんな按配なのかってぇと、オーディオの場合はギターよりは大部分がローインピーダンスだが機器類は99%シールドされてる。
逆にケーブル類の方が普及品だとプラグ部分が樹脂製で隙があるが、ローインピのお陰か実用上はほぼ影響を受けて無い。

ここでの再三登場するインピーダンスとは
電圧と電流の比の事で、電圧の割高なのがハイで割低なのがローだ。
詳細説明は難解なので楽器で必要な部分に絞って言うと、
①ハイインピーダンス:高効率だが雑音が簡単に入る
②ローインピーダンス:外部ノイズに強いが電流が沢山要る
電源の無い楽器には②は困難だ。

エレキはその創成期は増幅装置が真空管式しかなかったのと、上述の理由で元がハイインピーダンスだった。
今の技術ではEMGみたいにそれより低インピーダンスのピックアップも作れる様になってるが、音色面での差から敬遠され気味なのだ。
ハイインピーダンスは電気の伝達特性的にはリニアじゃないが、そこから来てる特性も今ではエレキ特有のニュアンスと周知されてしまっている。

リニアじゃないから色々妙な変質が起きてるが、楽器としてはそれが却って独特の味・ニュアンスとも捉えられる。
納豆等見方によったら腐ってるとも言えなく無いが、だから独特の美味しさがあるのと似た現象だ。
それが為ギターとアンプの間にバッファを入れるのを嫌がる人も居て、ハイインピの弱点を少しでも補う為にバカ高いシールドケーブルが用いられたりしてる。

個人的にはこの部分をそこ迄気にして無いのと、ベースが主なせいかバッファ敬遠は無い。
尤も超高価なケーブルは俺経済からはそもそも不可能だし、現代ベースはLine録りの方が主流なのもある。

こんな簡単に色々影響を受け易いハイインピなので、厳密に見るとシールドすると僅かな悪影響もあるにはある。
だが昔とは比べ物にならない程電磁波オンパレードな今日では、雑音の影響の方を気にした方が得策だと思う。
幾ら最高のニュアンスを持ててもジージーブーブーとノイジー過ぎれば、「その部分」なんか掻き消されちまうからね。

それとギター本体にバッファを内臓しても効果があるのはバッファ回路後限定で、ピックアップ等はハイインピのままなら雑音耐性は一切向上してないのだ。
だからバッファやケーブルより先に、本体のシールドを施すのが効果的だし重要案件なのだ。

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