コンプレッサー(リミッター)の話し①
前回の年寄りの僻み的なのの要因のひとつ、現代本邦でのコンプの使われ方疑問に絡む話し。
放送業界ではなく音楽業界での使用となると、これもやはりBeatlesヌキには語れない。
何しろ「音色の為に意図的に」活用しだしたのは、この人達辺りからなんだから。
その中でも一番象徴的で効果が明白なのが太鼓だと思うが、あれは電気音響処理のみならず太鼓自体の出音もセットで演れないと成立しない。
本邦ではかなり誤認が多そうなRingoの演奏力だが、全く侮ってはならんぜよ。
そもそもコンプ・リミッタの登場の経緯は、ラジオ等の放送で無用に音が歪むのを防ぐ為だった。
昔のラジオ放送(AM)はダイナミックレンジが恐ろしく狭かったから、そのまま電波に乗せたら実に簡単に歪んでしまう。
しかも無歪時の歪率すら元からかなり悪かったから、それより一寸でも上回ると激ウマアナウンサーでももう何喋ってるのかすら全然分からなくなるんだ。
それで音が変わって嫌だとしても聴き取れる為に、「仕方無く」コンプ・リミッタを掛けてたのだ。
後年FM放送が始まってもまだアナログレコードよりダイナミックレンジは狭かったので、テレビ(アナログ時代の電波方式はFM)でもFMラジオでも継承された。
今の感覚に置換したらレコードが.waveでラジオは.mp3位かな、只絶対値で上回ってたレコードも音的にも不便さはあったよね。
ラジオにも雑音が入る時はあるけれど、レコードはかなり神経質に条件確保しないとずっと続くパチパチ(スクラッチノイズ)がうるさいからねぇ。
ではBeatlesは音の面白みもあっただろうが、放送局でもないのに何故掛ける事にしたか。
正確には知らないので結果論でしかないが、掛ければ録音物でも生に近い迫力を体感出来るのは確かだろう。
ポピュラー音楽=普段聴き要素が強いってのは、Rock系だと聴く時の音量は大抵生より小さくなる。
だから本来あった音量由来の迫力が、聴く段階で無効になってるのだ。
彼等が「積極的な音響処理」をし出した時期が、Live休止と重なってるのは単なる偶然だろうか!?。
もし偶然だとしても「歳とって大人になったら元気無くなった」に聴こえてたら、人気がもっと堕ちてたんじゃないかって気はする。
元の発想が何であれ「家でもLiveと同等の迫力」が得られる様になったのは確かで、他のとは全く違う音たったんだから皆それに気付くわな。
では単純に昔乍らの音作り(特に太鼓)のままでコンプ・リミッタ掛けたらそれで行けるかっつうとダメで、今度は音の余韻部分が大きくなり過ぎて聴き取りが悪くなってしまう。
無造作に深くエコーを掛け過ぎて、歌詞が全然聴き取れなくなるのに似た感じ。
Liveだって響き過ぎる環境だと同様だが、そのままでプロは開催したりはしてないからね。
どうしても「邪魔になる」分だけは掛ける他にそれ用の処理、エキスパンダゲート等で不要部を削ぎ落すのも必要になって来るのだ。
かなり以前に記した人耳の「弁別能」や「自己保護機能」のせいで、生のに対しては人力耳コンプが元々掛っている。
けれども例えば「ギリギリ聴こえる」小音量時等だとこれが無効になるので、音源の方で処理するしかなくなるのだ。
本家Beatlesのでコンプ有・ミュート無のもあるけれど、聴くのに不都合の無い場合の限定版になっている。
偶然にしてもこれに太鼓音色ミュートは所謂ひとつの有効手段なのだが、これで当初の効果を得るには実は条件がある。
種明かしと言ったら大袈裟かも知れないが、誰でも擬似体験出来る方法はちゃんとあるんだわ。
では手順をご説明させて頂きますが、
①太鼓のどれもに徹底的なミュートを施す
→余韻が無くなりアタック音しか出なくなる
②太鼓以外の楽器音を大きくする
→僅かでも叩き損じれば太鼓が聴こえなくなる
これでこんな状態で安定して太鼓が聴こえる様に、さあさどうぞお叩きくださいませませ。
これには音量(パワー)が要るのも勿論だが、アタック音の太さがとてもモノをいう。
何分余韻が出せないんだからアタックがもし細過ぎたら、太鼓の音の「鳴ってる時間」自体が更に短くなる。
そうなると鳴ったのは辛うじて分かっても、もう音色なんか全然分かんなくなちゃう。
つまり超パワフルなドラマー(音色も含む)だからこそ大して音量に影響されず、音色だけの為のミュートって技が使えたって事。
確かにコンプ・リミッタのアタックタイムを遅らせれば「擬似的にアタック音の長さ」だけは同じ感じに出来るけど、その響きは全く別物になりスネアドラムだったらバックビートの音なのにゴスートノート(皮や胴は鳴らさずにごく軽く響き線の音だけを出す感じ)みたいになちゃうよ。
皮や胴の鳴り不足を補おうとして深く掛けた処で、出音の響き線の音の割合迄は変えられないからだ。
今度はそれをEQで下手に補おうとしたりしてるおバカさんもいる様だが、完全に可能にするには皮・胴・響き線を「完全分離収音」(普通の演奏形態じゃ不可能)しなけりゃ成立しない。
つまり全部をバラバラに出して別々に録って個別音響処理するしかないが、それの全てを同時に演ってる様にするにはタイミングを完全に一致させなきゃならない。
今はデジタルのお陰で時間軸修正はほぼ無限に出来はするけど、非現実的な膨大な手間暇が掛かる。
でもどう頑張ってもごく一部の達人以外機械より「不正確」なのが当たり前の人の演奏に、わざととか無しに無理くり正確にして何の魅力が出るのか俺には全く分からないのだ。
小奇麗さ優先なら伴奏は機械でいいじゃん、歌だってボーカロイドで良いじゃない。
如何に流行りと云え元音が無関係になる程こねくり回すのの、何が一体楽しいんだがサッパリ分かんないんだよねえ。
世界一パワフルなのでも標榜するなら別だけど、どれもこれもにそこ迄何でもホンマに要るんかいってね。
それだってホントの力人に同じ事されれば全く別物の音になって、結局距離はちっとも縮まらないんだぜ。
そして最近パターン化してる「因みに」ですが…。
Beatles使用のコンプは音色は大袈裟に変わってるけど、科学・電気的には今のと比べたら本来機能の能力は実はとても脆弱なんです。
そもそものダイナミックレンジが狭隘なんだから、それ以上に「抑える」のは不可能。
本人の音源を今一度良く聴いてみなはれ、ピアニシモで演った音は決して聴き取り易くなんかなって無いですよ。
それが今の程は深く掛かって無い証拠で、皆音色に騙されちゃってんだわ。恥
<つづく>
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