ドラムセット録音の話➄「Mic の適合性(物理的)図解編」
ドラム録音での Mic 選択の適合性に行くが、物理原理的観点からのだ。
度々触れてるが好みや裏技等とこの世界では何でもアリだし、それを否定する気は更々無いのを断っておく。
実際使用時に完全な可否は無いが、目的や意図に対しての可否は明確に存在している。
なので Mic 各方式の性質を知ってた方が便利で、少なくとも俺はそれが役立っている。
波形の概念図の説明だが実際の楽器の波形はもっと複雑なのと上下にあるが、今回の説明に不要なので上半分を簡略化で描いた。
黄:楽器の波形
桃:ダイナミック型の拾える範囲
水:コンデンサ型が拾える範囲
左が音源に近く、右が少し離れた場合の例。
始めは太鼓と金物( Cymbal )に対してで基本的には太鼓はダイナミック型、金物にはコンデンサ型が合っている。
前回記した通りダイナミックは速度・コンデンサは感度に優れるからで、他にも Cymbal は太鼓より距離を離して拾った方がらしい音になり勝ちなのもある。
逆にしたらどうかと云うと必ずしも駄目ではないが、以下の点が不利で工夫が必要になって来る。
運良く高耐入力のコンデンサがあって太鼓の On (超近接集音)でも平気だとして、好みを除くとそのままの音は拾えて居ない。
Cymbal だと耳では太鼓と同音量に感じても実際はせいぜい半分の音量しか出てないので、大抵はダイナミックならコンデンサより近付ける事になるだろう。(これについては次回)
普段人が(一番近くの太鼓奏者でも!)聴くより近いのと、倍音の上の方が欠けて(特に余韻の終りの部分等では)かなり違う印象になる。
これも以前書いたが体験しての実感で波形等色々分析するとちゃんと高域は入ってるのに、いざ聴くと艶とか鮮明さが何故か殆どお留守になっててどうにも地味なのだ。
当時はコンデンサ不所持だし俺言い「目立つ倍音」思想が無かったので、迷宮入り&諦めて妥協&苦しい誤魔化し。
ここで疑問視されそうな「目立つ」が少々「訳あり」で、俺言い「目立つ倍音」は人耳に対しての事だ。
つまり耳に目立っても電気・物理的には同じと限らず、実際の含有量が思いの外少ない場合が多々あるのだ。
だからそれが欠けると途端に別物っぽくなってしまい、一度無くすと後からどうにかするのが大変困難になる。
目立つ倍音は周波数(音程的高さ)のみならずその出方(音量の上下の仕方)等総合的に成り立ってるので、少し補えても後での完全再現はまず無理で安物コンデンサにも負ける程だろう。
残念だが最近は特に Off 用ダイナミックを見かけないので俺も未知だが、あっても Cymbal の「らしさ」を気にするならコンデンサ型系一択になると思う。
では太鼓をコンデンサでで有効なのが、Off Mic の場合だ。
少しでも距離が増せばその分音の到達時間も遅れ、コンデンサでも追付いて来るからだ。
波形的に言うと最初の「山の傾斜がなだらかになる」で、その分斜面の低い所から拾える様になる。
最大音時のピーク成分(波形にすると最初の尖った高い山)も間の空気が多いとマイルドになり、この面でも悪影響が格段に減る。
図では手抜きして山の高さと傾斜だけ違えてあるが、更に現実には山の尖り具合も鈍くなったりと…。
御免なさい、これ位で勘弁しといて。
因みに Mic の速度差は人に検知出来る時間的長さでは無く、万一判るとしらそれは微妙な音色差等になるだろう。
以前の繰返しになるが昔と違い現代の標準的デジタル録音だと、ほぼ Mic で「拾えたありのまま」が記録される。
録った後の音響処理にしてもデジタルは「必ずしも美味しくは無く」ても、目的以外の部分が変形させられる事がほぼ無くなっている。
だから「昔より好みじゃない」にしても、「Mic の音」が最後迄影響し易くなったのだ。
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